ランドエージェントコーポレーションの社長野口から連絡が入ったのは、翌朝十時を過ぎた頃だった。
「はい、ありがとうございます」
良太の予想に反して思いがけずバーを貸してもいいという。
野口は明るい優し気な口調で、好意的な印象も受けた。
「それでというわけではないんですが、実はお願いがありまして」
「お願い、ですか?」
何か条件をつけようというつもりなのだろうか?
「美亜っていうハーフタレント、ご存じですか?」
「美亜? ああ、バラエティ番組なんかで見かけますが」
バラエティやCM、たまにドラマのちょい役などで出たりしているが、人気はそこそこで、ここ五年程をかけて馴染んできた感がある。
ただ、CMに出ているだけ人の目に触れる頻度は高いし、CMに抜擢されるだけスポンサーにも信用度があるということだろう。
「もし、出来ればですが、ドラマでバーの客くらいな役で出してもらえないでしょうか?」
「え、それはまず制作サイドに打診してみないことにはお返事できませんが」
美亜はランドエージェントが推しているタレントとかなんだろうか?
「当然です。あ、語弊のないように申し上げますが、美亜のことを店をお貸しする条件にするつもりはありません。あくまでも、もし使っていただけるならです」
「わかりました。美亜さんの出演については後ほどこちらからご連絡致しますが、あの、美亜さんは御社とは何か……」
すると野口は「あ、失礼しました、先に申し上げるべきでした」と言いおいて続けた。
「美亜は海老原の妹なんです」
「え、あ、そうでしたか」
そういえば、といつだったかテレビで見た美亜を思い出した。
一時のハーフタレントブームの生き残りだが、育ちがいい、顔だちの割にアクがなく素直な性格が長く業界に居られる所以だろう。
最近はハーフとわざわざ区別するまでもなく、様々な人種が混在しているし、番組にも起用されている。
海老原が活躍していた頃は少し時代が早すぎたのかも知れない。
野口の電話を切った後、良太は美亜についてざっと調べると、とりあえず坂口に電話を入れた。
「美亜ちゃん? ああ、そんな子いたっけね。俺には異存ないよ~、良太ちゃんにお・ま・か・せ! んじゃ、よろしくね~」
良太は坂口の電話を切って、一応工藤の携帯を鳴らす。
「ああ? 美亜?」
「ええ、ランドエージェントの野口さんによると、海老原さんの妹さんらしくて。あ、別にそれが条件ってわけじゃないみたいですけど」
「貸すっていうんだったらいいだろ。お前が決めろ」
案の定な対応で携帯は切れた。
いいのかよ?!
はあ、と一つ溜息をつくと、美亜の事務所に電話を入れた。
そして、またしても去年は本谷和正の件でいろいろあったミタエンタープライズだ。
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