というのも会社各々のやり方があるのはわかるが、ミタエンタープライズは一握りの超売れっ子以外の、特に下っ端の新人に対する待遇がいまいちなのだ。
本谷は昨年青山プロダクションが関わったドラマに出ていた人気上昇中の新人俳優だったが、マネージャーが担当する別の俳優にかかりきりで、本谷はほっとかれたために何かと支障が出たわけだ。
本谷のせいではなかったし、本谷自身は立て続けのドラマやCM出演のお陰で人気だけでなく、じわじわと表現力に磨きがかかり、事務所の方でも今年から本谷専用のマネージャーをつけることにしたようだ。
良太も本谷とはドラマ『田園』の打ち上げ以来顔を合わせてはいないが、ドラマも好評で注目度も高くなり、年末年始あちこちの情報番組に顔を出していた。
ともあれ今は美亜だ。
年齢は二十八歳、俺と同い年くらいか。
てことは、新人ではないけど、売れっ子とまではいかないから、中堅ってとこで、どういう扱いなんだろう。
そんなことを考えながら事務所に電話を入れると、美亜のマネージャーに取り次いでくれた。
「マネージャーの水谷と申します。ランドエージェントの野口さんの方から連絡をいただいておりますが、それではドラマに出演させていただけるんですね?」
女性のマネージャーの声からは嬉し気な様子が伝わってくる。
「ええ、そうなんですが、出演と申しましてもおそらく店の常連客といった賑やかしのようなものです。よろしいでしょうか?」
「それはもう、エキストラでも何でも顔を出させていただけるのでしたらありがたいです」
結構人気はあると思っていたが、美亜はそこまで頑張らないとという状況なのだろうか。
「ああ、ここだけの話、これからの仕事量が減っておりまして、少し焦っているんです。本人はお嬢様だから何にも考えてませんけどね」
水谷の発言から美亜はそうガツガツと仕事をこなしていくタイプではないだろうことが窺える。
近日中にオフィスで逢うことになったが、早いとこキャスティングを済ませて坂口と工藤にOKをもらわないと事務所に交渉もできない。
こんなんで秋に放映とかできるわけ?
またしても、俺に押し付けてあの人たちときた日には!
と、文句を言っても始まらない。
俺が仕事しないと。
「大丈夫? 朝から大きな溜息ね」
鈴木さんに指摘されて、良太はハハハと照れ笑いする。
「いろいろありまして」
「午後から千雪さんとかいらっしゃるんですよね」
「ええ、まあ」
推理小説家小林千雪の小説はこれまでに何度かドラマ化されているが、秋放映予定の『今ひとたびの』は、主演の二人とゲスト主役には竹野紗英、レギュラー陣以外決まっていない。
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