工藤とは同年輩で独身美女として有名だが、めったにメディアに顔を見せないことでも知られている。
沢村を起用した東洋グループのCMの音楽も、良太はドラゴンテイルに依頼したのだが、『コリドー通りでよろしく』のロケになぜ彼女がいるのだろうと、良太は思ったのだ。
「それがたまたま近くでお茶してたら、高広の顔が見えたからさ」
「そうなんですか。今回、東洋グループの音楽担当、よろしくお願いします」
「うん、良太ちゃんの頼みじゃ頑張るしかないよね!」
長身でサバサバしたカッコいい系のボーカリストなのだが、以前ちょっと話した時、工藤と昔何かあったようななかったようなことを言っていて、良太はそれが心の隅でずっと気になっていたのだ。
「なんだ、良太の頼みだから引き受けたって?」
工藤も心なしか、軽口を聞いている。
「そりゃそうよ。高広の仏頂面より、可愛い良太ちゃんに頼まれればうんと言わざるを得ないでしょ!」
工藤と昔付き合っていたものの、今は悪友と化している大女優山内ひとみとは類友らしく、もちろん、ドラゴンテイルの音楽も好きだし、良太も決して水野を嫌いではないのだが。
「良太ちゃん、週末、よろしく!」
先ほどまで警視庁捜査一課和泉警部役の川野さくらと二人並んで青山通りを歩くシーンを撮影していた外科医で格闘技の達人という設定の椎名尊役宇都宮俊治が、監督のカットがかかった途端、良太を見つけてやってきた。
「お疲れ様です。こちらこそよろしくお願いします。宇都宮さん、軽井沢は田之上さんに送ってもらうんですか?」
「いや、自分で行くつもりだけど」
「え? お一人で? 大丈夫ですか?」
てっきりマネージャーが送り迎えしてくれるものと思っていた良太は、ちょっと心配になった。
「よかったら、うちのメンツと一緒に行きます?」
「いやいや、結構ドライブが気分転換になるんだ。それに、忘れちゃいけないよ、俺、釧路出身だからね、冬道とかキャリアが違うよ」
そう言って笑う宇都宮だが、青山プロや他の面々が週末に集中したので、せっかくだから楽しい方がいいと、スケジュールを無理やり合わせてくれたのだ。
「でもお疲れのところ………」
「だってほら、工藤さん、一緒でしょ?」
「はあ………」
工藤だけでなく、宇都宮も工藤と何となく張り合っているのだろうか。
かといって、美亜とラブラブっぽい小笠原らとはどちらも遠慮したいだろう。
「あ、じゃあ、辻さんや研二さんと一緒に行かれたらいかがです? 屈強な三人組で、ボディガードもお任せってくらい。グランドチェロキーで一人くらい増えても大丈夫じゃないかな? 気を遣わないメンツだし、おそらく俺らの車と一緒に動くと思うんで」
すると、宇都宮も「へえ、グランドチェロキー?」と少し興味を持ったようだ。
「聞いてみますよ」
「おい、良太!」
その時、工藤が呼んだ。
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