「近場にこういうモノが手頃に食べられるってのは、便利なもんだな」
一体いつの時代の人間だよ的な感想を口にして、工藤はおでんの蓋を開けた。
日本酒やソーセージ、サラダなども工藤は袋から取り出した。
コンビニなどほとんど寄ったことがなかった工藤だが、先日良太のためにおでんや食料を買い込んだことで、その便利さを知ったというところか。
しかも炬燵に入ってすっかり寛いでいる。
「それ、ちょっと温めるよ。酒も熱燗にするんだろ?」
良太はジャージの上下を持ってバスルームの前に戻り、バスタオルを取って手早くジャージを着ると、マグカップを持って炬燵に戻る。
日本酒の蓋を開け、マグカップに注いでレンジに入れると、良太は冷蔵庫からビールを出し、コンビニでつけてくれていた箸と皿を二つ炬燵の上に置いた。
熱燗ができると取り出しておでんのカップをレンジに入れ、温まるまでにサラダのパックの蓋を開けて工藤の前に置いてから、ソーセージのパックのフィルムを少し開け、温まったおでんと入れ替えてレンチンする。
簡単調理が終わると、猫たちが工藤の向かい側でくっついて眠っていたので、良太は必然的に工藤の横に座った。
「何でもレンジ一つでできるわけか。なるほどコンビニってのは便利なもんだ」
工藤は感心したように言うと熱燗を口にした。
「同じことを繰り返すようになると、老化のはじまりだってよ」
良太はハフハフと熱い大根を齧りながら言った。
「フン、何かあるたびに熱を出すとか、幼稚園児だけかと思ったが」
皮肉で返されて、良太はうっと言葉に詰まる。
「あれは、つい、クセみたいなもので………」
ごまかすようにビールをゴクゴクと飲む。
「水野の母親が危ないんだそうだ」
マグカップの日本酒を飲み干すと、工藤が唐突に言った。
「え?」
森村が言っていたのはそのことか。
「リヨンの出身で、母親の兄弟が明日駆け付けるらしい。水野は一度、郷里に連れてってやりたかったと悔やんでいた」
もうそこまでの容態なのかと、良太は思う。
「水野の明るさは母親譲りらしい。動物保護にのめり込んだのもな。さっきは弟に息抜きして来いって言われて、病院から近い店でぼんやりしていたんだと」
そんなこととは知らず、水野を妬いたりした自分を良太は恥じた。
「水野さん、ほんといつも明るいから、そんな……」
「まあ、ちゃんと親がいるのなら、ちゃんと大事にして最後まできちんと見送ってやるのがいいさ」
工藤の言葉は良太の心に染みた。
工藤はいつも良太に家族を大事にしろと言う。
いつだったか、決まっていた家族旅行を反故にした良太を怒鳴りつけたのもそういう思いがあるからだろう。
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