物心ついた時にはもう母親もおらず、祖父母は極道の世界の人間で逢うこともなく、育ててくれた曽祖父母は工藤の中学の時に相次いで亡くなったという。
おそらく親代わりだったという平造のことは工藤はとても大事にしているのだろうと思う。
「平さんのバースデイ食事会、吉川さんにはサプライズってことでお願いしてて、土曜日の夜、吉川さんにレストランへ呼び出してもらう手はずになってるし」
良太は言った。
「何人、行くんだ?」
「こっちからはアスカさん、秋山さん、小笠原、森村、俺と工藤さんの六人だけど、亜美さんや牧さん一人参加だし、平さんの誕生日のこと千雪さんに話したら、千雪さんと京助さん、それに沢村や佐々木さん、直ちゃんも参加したいって。ひょっとしたら、他にも追加メンバー出てくるかも」
「フーン、まあ、いいんじゃないか?」
「行けないメンバーからは平さんへのプレゼント預かっていくことになってて、明日までにオフィスに届ける手はずだし」
「車に積めるのか?」
さすがに工藤は怪訝な顔をした。
「辻さんら、加藤さんと研二さん、でかい車で行くから荷物引き受けるって言ってくれてて、行く時、オフィスに寄ってくれる手はずになってます」
「フーン」
「あ、それで、宇都宮さん、一人で車で行くって言ってたから、辻さんの車で行ってもらえばと思って、さっき辻さんに連絡も取ってあるんで」
良太がビールを飲み干すと、工藤が日本酒の瓶を良太の前に置いた。
自分用のマグカップを持ってくると、工藤の分も日本酒を注いでレンジに入れる。
「金曜の夕方、ここから辻さんたちと俺とモリーと牧さん、アスカさんと秋山さん、それに小笠原と美亜さんも一緒に出ようってことになって車四台。先日の新潟の立ち往生ほどでなくても、事故とかで渋滞とかもあるかも知れないので、念のために」
熱いマグカップを二つ手に持って炬燵に戻ると、良太は言った。
「工藤さんもどうせなら一緒に行けばいいんじゃないですか? 時間やり繰りして」
「えらい団体さんだな」
「人数的にはバスでも仕立てられそうですけど、一応、プライバシーとかも考慮したので」
特に小笠原はせめて車では美亜と二人でいたいらしいし。
「何時の予定だ?」
「一応五時までに集合で、半くらいまでには出ようかと」
「それまでに戻るようにするさ」
それを聞くと良太は内心喜んだ。
「スキー用具とかもまとめて辻さんが持って行ってくれることになってるんで、金曜までに下に降ろしておきますけど?」
「ああ、頼む」
工藤はたまにおでんの里芋などをつまみ、日本酒を飲む。
「ああ、しまった、また上着、猫の毛だらけになってるじゃん!」
ようやく工藤が上着を着たまま炬燵に入っているのに気づき、良太は喚いた。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
