春立つ風に240

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「今さらだろ」
「上着くらい脱いでから炬燵に入ればいいだろ!」
 熱燗をマグカップに半分くらい飲んだ良太は、酔いが回り始めて声も態度も大きくなっている。
「いい加減学習しろよな」
 上目遣いにブツクサ文句を言うと、良太はゴクゴクと少しぬるくなった熱燗を飲みほすと、また日本酒の瓶に手を掛けた。
「おい、もうその辺にしとけ」
 工藤が瓶を取り上げると、「ケチ臭い!」と言いながら良太は立ち上がり、トイレにのたのたと入っていく。
 フンと鼻で笑い、工藤も立ち上がって上着を脱ぐと、ハンガーラックに掛け、ネクタイも抜いて上着の上に引っ掛けた。
 トイレから出てきた良太はまたのたのた歩いてベッドに突っ伏した。
「こらこら、まだ寝るなよ」
 工藤の声が頭の上から降って来て良太は今にもまどろみそうな目を半分開けた。
「何だよ………」
 振り返ろうとしたところを後ろから工藤が覆いかぶさってきた。
「う………重い! 重いってばよ!」
 酔った頭でも尻に密着した工藤の状態がわかる。
「うう………さかってんなよ、オッサン! え、ちょ………」
 するりと引き下ろされたジャージのズボンの下は、さっきバスタオルの代わりにジャージを着ただけで、パンツも履いていない良太の尻が露わになった。
「ほろ酔い加減の良太ちゃんが妙にエロいからおさまりがつかなくなったんだよ」
「ヘリクツこねやがって! 退けよ! このエロオヤジ!」
 良太の中では、水野のことがまだ抜けない棘のように喉の奥に引っかかっていて、そのまま工藤の言いなりになるもんかという決意が酔っていても頭のどこかにあった。
 水野の母親の話はそれとして、おそらく昔工藤と何かあったに違いないと、良太は確信している。
 柏木が去ったと思ったらまたしても、昔の女だか何だかが工藤に近づいてくる。
 工藤の指が冷たい液体を帯びて良太の中に侵入してきた。
 サイドテーブルの引き出しに、工藤が勝手に入れておいたローションだが、そのまま入れておくしかできない良太の、切ない心を露呈している。
「やだってば! 鬼! オヤジ! クソエロ野郎!」
 口から洩れるのは子供じみた抵抗の欠片だ。
 それでも工藤が押し入ってくると、悪態も俄かに弱弱しくなり、やがて言葉にならない喚き声が甘くなる。
「んや……あんん! あ……あ……あ………!」
 工藤の唇が良太の首筋を這う。
「んあっ……や……あ…と……つけんな……!」
 沸騰しそうな頭でも、先日辻や森村に見つけられた痕に焦りまくったことを思い出して良太は懸命に言葉を繋ぐ。
 

 


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