「あ、是非参加したいです、また連絡下さい」
昨年、軽井沢にある綾小路の山荘で友人知人が集ったスキー合宿はいろいろすったもんだもあったものの、久々良太も楽しかったのだ。
「ラインするわ」
千雪はそう言い残して京助とともにオフィスを出て行った。
京助と千雪、実は友人知人の間では公認の仲だ。
聞けば結構前に、京助は親や家族には伝えていたようだし、去年の正月、綾小路家恒例の親戚財界人が集った新年会で、招待客の一人が京助の結婚云々の話題を持ち出して虎ならぬ京助の尾を踏んだらしく、ブチ切れた京助が、付き合っているのは千雪だとぶちまけた、らしい。
新年会に顔をだしていたアスカの談だ。
よくいがみ合っている気がするが、京助と千雪を見ていると、最近良太はちょっと羨ましい気がしないでもない。
工藤と自分のこととは比べようもなく、それぞれの付き合い方があるとはわかっているつもりなのだが。
昨今ダイバーシティを推進する企業が増えているし、海老原がCEOであるランドエージェントもやはりその一つなのだろう。
グローバルで社員も多様な国籍なんだろうけど、そういえば社長の野口さんの『ハニー』って、あの会話の流れからするとジェフって人で、それって男だよな、多分。
良太はふと思い出した。
ゲスの勘繰りみたいだと、聞き流すつもりだったけど。
バーでの海老原とジョンとフィオナの修羅場も英語なんかわかりませんて顔して、知らぬ存ぜぬを通してたつもりの良太だったが、海老原が帰りがけ、なかなかのタヌキだ、などと良太にわざわざ言い残していったのだ。
あれって、お前しっかり聞いてたよなって念押し?
ああ、もう、やっぱあの人苦手だわ、海老原。
まあ、でも海外行っちゃったみたいだし、店を貸すくらいでCEOがまた首突っ込むとか、ないよな。
極力ポジティブに考えを持って行こうとするのだが、ランドエージェントの社長野口から、その海老原の妹をドラマに出してくれと頼まれたのだ。
いや、妹の仕事だし?
海老原氏には関係ない、よな?
「良太ちゃん、そろそろ佐々木さんのところに伺う時間じゃない?」
つらつら考えているうちに時が過ぎていた。
「わ、いっけね!」
あたふたとコートを掴み、ブリーフケースを持って良太はオフィスを飛び出した。
駐車場に降りてジャガーのエンジンをかけると、良太は一番町の佐々木家に向けてハンドルを切った。
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