「ドキュメンタリーの方は、佐々木先生には快諾頂きました。一応、佐々木さんにも出演して頂けないか、先生の方からお話をして下さるそうです」
すると工藤はフン、と鼻で笑う。
「何だよ、そのバカにしたような顔は」
ついぞんざいな口調で良太はつっかっかる。
「お前も猿知恵を働かせるくらいにはなったかと思ったのさ」
「あんたとか見てると、自然と猿知恵が身に付いちゃうんだよっ!」
「まあ、飲め」
笑みを浮かべたまま工藤は言った。
良太はフン、とばかりにグラスを取ってゴクゴク飲んだ。
「『今ひとたびの』は順調なのか?」
にやけた顔のまま、工藤が聞いた。
「そっちはもう全然、問題なく、動いてます。メインなのでカットが多くなる竹野さんのスケジュールに合わせる感じで、大澤さんにも合わせてもらってますが、何とか、ロスのない形で行ければ、来週初日から江の島ロケに入る予定です」
ロケ地が近いのは有難い。
今回の作品は江の島から江ノ電沿線が背景となっている。
前作のように、京都だとか、白山だとか、遠距離になると良太が動くにも、やりくりが大変なのだ。
そんなところへまた、坂口のごり押しのお願いなんかが入った日には冗談ではなくなる。
いずれにせよイレギュラー込みで考えて行かないことにはやっていけない。
それにしても今回の鴻池絡みの件は、工藤にとってもかなりなイレギュラーだろう。
「今回の、クリエイターさんはジャストエージェンシーの方なんですか?」
気になっていることを良太は口にした。
何にせよ無理な話らしいのだが、クリエイターがいないことにはお話にならない。
「佐々木さんの元で何年かやってた芝田さんが担当するが、最終段階で佐々木さんのチェックを受けるってことになった」
「ああ、去年、佐々木さんが超忙しかった時に直ちゃんがオフィスの留守番頼んだって人ですよね、デザイナーの」
美紀さんと言って直子もジャストエージェンシー出身の浩輔も仲がいいらしい。
「ここ何回か映像の方もやってるらしい。とにかく、佐々木さんクラスで今からオファーしてOKするようなクリエイターはいない」
「今年はゆったりしたスケジュールで行くって言ってたけど、佐々木さん、既にオーバーワーク気味ですもんね」
「相田が今、『チーム相田』ってフリーランスで仕事ごとに集まるってやり方で動いているが、制作は相田に任せることになった」
相田和彦は以前、相田企画という会社で青山プロダクションの業務を請け負っていたが、景気のあおりを受けて倒産している。
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