春立つ風に45

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 会社組織といっても無論千差万別、あらゆる形があるのだろうが、青山プロダクションの社員と言えば、各俳優のマネージャー以外に、軽井沢の別荘を管理している平造は別として、経理や庶務担当の鈴木さんを除けば、良太一人、上司と言えば中間管理職なんぞ飛び越えて社長の工藤しかいない、社員数だけで言えば零細企業だろう。
 それが、仕事自体は大きなものが多く、スポンサーもこの東洋グループ関連から鴻池産業、美聖堂など、大手企業がついている。
 だから良太は社長秘書兼運転手兼プロデューサーなどという何でも屋でいなければならないのだ。
 それは言葉を変えると、この会社だからこそ、丸の内の大手企業のプロジェクトに参加させてもらえるということなのだ、と良太は再認識する。
 いやあ、工藤や坂口さんが単に俺に何かと丸投げしてくるってだけのような気もしないでもないが。
 心の中ではそんなことを思いつつ、良太は今回のプロジェクトに関してまとめてきた資料を配り、沢村に関するデータやプロジェクトに即した制作の方向性を説明した。
 と何度目かで顔を上げて、お歴々の表情をざっと眺めた良太ははたと宮下と目が合った。
 さり気に逸らしたものの、きっとまたオバサンの突っ込み、くるぞくるぞと心の中で呟いた。
「最終的には、制作過程で沢村氏の持つ魅力をできる限り引き出していただいて、オバ……」
 うっわー、俺の口! 何を言うつもりだ! くっそ、工藤の呪いだ! うっわー!
「おばあさん、おじいさん、おかあさん、おとうさん、子供たち、そういった形の家族は今、古き良き時代のもののように言われておりますが、いわばカテゴライズされないいろいろな形の家族やコミュニティ、様々な方々に笑顔になっていただけることが、このプロジェクトを成功させる一つの要因と思っております」 
 心の中で喚き散らした時間は〇、〇〇数秒、もちろん顔に出すようなへまはしないものの怖ろしくとってつけのキーワードを並べ立てて良太は説明を終え、とにかく宮下の方を見ないようにして着席した。
 実のところ心臓はバクバク、やばいやばいやばいやばい、とまた口には出さずに心の中で唱えている。
 何だよ、とってつけた、おばあさんって!
 まとまってもない説明になっちゃったじゃないかよ!
 夕べ、工藤が、オバサン、連呼するからだっ!
 さらに、昨夜の痴態がフラッシュバックしたりして、良太は頬が熱くなるのを必死で隠した。

 


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