春立つ風に50

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 隅の方には、例のシャキッとしたマネージャー水谷と今日はちょっと露出多めにスタイリッシュでモデル風にくっきりメイクした美亜がいた。
 身長が一七〇センチの美亜がヒールを履くと、良太とほぼ目線が変わらないくらいだ。
 ぱっと見、気が強くて遊んでいそうな雰囲気を醸し出しているが、本人はのんびりとした優しい女性だ。
「あ、新、礼央も一緒?」
 その美亜が立ち上がって入り口の方を見てひらひらと手を振った。
 良太が振り返ると、何と海老原礼央と野口新が立っている。
 野口の後ろにいる金髪碧眼の髭の男も知り合いのようだ。
 え、何で? 海老原って海外行ったんじゃなかったのかよ。
 ここは挨拶をしないわけにいかないと、良太は二人のところへ足を向けた。
「やあ、広瀬さん、ちょっと見学、よろしいですか?」
 良太を見つけて野口が気さくに声をかけた。
「もちろんです。先ほど撮影が始まりまして、ちょうど今休憩中です。監督と坂口先生、ご紹介します」
 良太は三人を溝田監督と坂口のところに案内した。
 溝田は昨年のドラマ『田園』からの続投だ。
「いやあ、まさかこの店をお借りできるとは思ってもみませんでした。本格的なバーで、みんなよろこんでますよ」
 海老原と野口の手を握り、満面の笑みを浮かべた溝田は坂口とウマが合う類友だから、調子のよさも同じくだ。
 そんな中、金髪の男が野口に、撮影だと酒が飲めないのか、と聞いている。
 男は何となくイラついているようだ。
 貸し切りだから、他の店に行こう、ジェフ、と野口が宥めているのが良太の耳にも聞こえた。
「バーテンダーさんいるんでしょ? 良太ちゃん、ちょっとくらい飲ませてやったらいいのに」
 そこへトイレから戻ってきた宇都宮が気楽そうなことを言う。
「え、でも……」
 宇都宮が海老原や野口に挨拶をしている間に、良太は溝田に確認した。
「ああ、オーナーさんだし、休憩中、邪魔にならない範囲でならいいんじゃないの?」
 良太が野口に伝えると、野口は恐縮して、申し訳ありません、という。
「我儘な連中で、撮影中だからこなくていいって言ったのに」
 野口はジェフを促してバーカウンターに向かった。
「ドラマ作るのはいいけどさ、今、テレビ見るやつ、減ってんじゃないの?」
 いきなり海老原が攻撃的な口調で良太に言った。
 こいつ、大山の類友だな。
 良太は思わず、パワスポの会議でいつも良太に難癖をつけてくるシナリオライターの顔を思い浮かべた。

 


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