「そうですね、どうしても商品購買意欲の高いコア層をターゲットにせざるを得ないところがありますし、リアルタイムでなくても見られるネット配信で好きな時間に見る方が効率的かもですが。もちろんネット配信も込みで制作していますけど、コンテンツの質が悪ければ視聴者も当然離れます。リアルタイムでみたくなるようないいモノを作るっていうのが究極的な目標かと思います」
「へえ。優等生的なお答え」
海老原はいかにも小ばかにしたような口調で良太を見た。
「あ、そうだ、良太ちゃん」
坂口と話していた宇都宮がまたやってきて、海老原と良太の間に割り込んだ。
「鍋、第三弾、行くからね」
「は? まだドラマ、始まったばっかなんですけど」
懲りないよな、とは思いつつ、海老原を遮ってくれた宇都宮に良太は少し感謝する。
「だってほら、今のうちにスケジュール押さえとかないと、良太ちゃん忙しいし」
「何ゆってんですか。俺のスケジュールなんか押さえてどうすんですって話」
「だってどうせ、みんなの都合ってやつで、撮影、ダラダラ秋口まで続くだろ?」
「うーん、それって宇都宮さんとか川野さんとかのスケジュールがタイトだからでしょ」
「三月くらいがいいかな?」
「はあ」
良太が適当な相槌を打っていると、やがて監督の一声で次の撮影に突入した。
美亜は数名の常連客役の一人として、奥のソファに若い男性客役と一緒に座っている。
イケメンスタッフ役の真嶋だが何だかぎこちなく、少し硬くなっているようだ。
スマートなイケメンって感じじゃないよな。
まあ、新人だからな。
一生懸命過ぎなのがこちらにも伝わってくる。
酒に関するうんちくを口にする宇都宮に、小笠原が酒は美味く飲めたらそれでいいと反発するシーンがカウンター中心に撮られている。
「ジントニックお願い」
美亜が真嶋を呼んで言った。
あれ、台詞あるんだ、いつの間に。
坂口の場合、こうやってその場で科白というのもよくあることだ。
「はい、ただ今……」
真嶋が美亜の方へ向かおうと踵を返したその時、テーブルの脚に爪先が引っ掛かってものの見事にトレーのグラスごとひっくり返った。
うわ、やっちゃったよ。
監督からカットがかかるなり、良太は真嶋に駆け寄った。
「大丈夫ですか? 怪我、ありませんか?」
撮影は休憩となり、マネージャーも飛んできた。
「あ、はい、すみませんでした!」
真嶋は慌てて立ち上がり平謝りすると、割れたグラスに手を伸ばそうとした。
「あ、触ると危ないんで、こっちでやりますから。服、大丈夫ですか?」
「申し訳ありません!」
マネージャーがまた頭を下げる。
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