「問題ありません」
極端に何かトラブらない限りは問題なしだ。
「沢村の方はどうだ?」
明け方、国道一三四号線や鵠沼海岸沿いを走る沢村を撮ったというので、午後からの『ギャット』の撮影を前に、良太はプラグインに寄った。
江ノ電周辺は序の口で、これから沖縄から稚内と制作チームは攻めの姿勢を見せている。
ちょうど河崎と三浦は関東エクスプレスの案件で動いているようだ。
藤堂と佐々木に沢村を撮影した映像を見せてもらったが、沢村はいつになく引き締まったいい顔をしている。
りょが「沢村は?」と尋ねると「ホテルで休んでから自主トレ行く、言うとった」と言った佐々木は仕事モードで厳しい目をしていた。
「江の島、いい感じで進んでます。そっちはどうですか?」
「まあ、こだわりの連中が集ってるから、遅れ気味だが、想定内だ」
「そうなんですか」
遅れ気味ってことは、まだまだ京都から帰れないってことなわけだ。
何だか、工藤の鬼面が見たいなんて思ってしまった自分が良太は情けない。
「食事ちゃんととってくださいよ!」
「ああ、また連絡する」
もっと話していたかったのにやっぱりすぐ切れてしまう。
俺だってもうアラサーなんだ。
十分オッサンだぞ?
弱音吐いてるヒマなんかないんだし。
良太は自分を叱咤激励して、店内に戻った。
「しかし、ここはあまり前に出ない方がラスボス感があるし」
「ワンカットでもそれらしいところを見せておかないと、何だよこいつはってことになる!」
うっわー、問題なしっつった途端にこれかよ!
坂口と奥寺が声高に揉めている。
「どうしたんだ?」
良太は傍に立っていた小笠原にこそっと聞いた。
「見ての通り。初めて奥寺さんが出るシーン、奥寺さんがあまりに存在感がなさ過ぎるとかって。坂口さんの言うには、最初は好々爺的な雰囲気で煙に巻いた方がいいってんだけど、奥寺さんは、ワンカットでもアップとかで印象に残らないと意味がないって」
「はあ、どっちもって感じだよな」
それこそああ言えばこう言うで、良太もしばし静観していたが埒が明かない。
「まあ、ここはひとつ奥寺さんの意見を尊重して、いっそちょっと前に流行った、ドアップってやつでいってみるとか」
そこへ監督の溝田が割って入ろうとしたが、「何バカなことを言ってる!」「人まねしてどうするんだ!」と二人同時に却下された。
あらら、どうすんだよ、これ!
段々収拾がつかなくなってきたのを見て、良太は意を決して休憩を入れようと一歩足を踏み出した。
「いいとこへきた、良太ちゃんならどうする?」
ひえ、俺に振るなよ! 坂口さん!
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