「工藤さんの車にぶつけたヤツ、やっぱその筋のもんらしいで」
「え……」
良太は言葉が続かない。
「これまで、俺らが調べあげた情報によるとや、工藤さんが中山組組長とは縁を切っているのが事実としても、組関係のモンにとっては、工藤さんは中山組組長の甥であることに変わりはないんや」
それは波多野からも聞かされている。
「組の存続にかかわることやからな、工藤さんが水面下の抗争に巻き込まれるんは止む無しくらいのつもりでおらんと。もともと小さな火種はあったんやけど、例のSNSで工藤さんが拡散してもうたんがここんとこ面倒な事件になっとる原因やな」
「はあ………それについては俺も非常にまずかったなと」
やはり自分のせいでという悔いがまたぞろ良太の脳裏に浮かぶ。
「良太が責任感じる必要はないで? むしろ状況的にそうならざるを得なかったいうこともあるし。とにかく組長には娘が一人おるだけやから、組長の跡目争いで、系列の島本組組長を推す一派と、若頭の息子を組長の娘と結婚させて組長にさせるいう芦田組一派の抗争になってきとおる」
「はあ……」
「ところがここにきて、特に工藤さんがSNSで拡散されたことで、双方ともが工藤さんを担ぎ上げようとするんじゃないかという噂が流れよって。ってのも、工藤さん、迫力もオーラも半端ないやろ? 要はあれや、新興宗教みたいなもんや。それが双方とも利害関係から、それぞれが推しとる島本組長や若頭の息子やないと都合が悪いわけや。要はあの工藤さんを思い通りに動かせるわけないってなことで、双方ともに工藤さんを潰そういう策略がどこかしらから出て来よるいうわけや」
「ふざけるな!」
良太は聞いていて憤りに拳を握りしめる。
「ただな、あの冤罪事件にしろ、今回もおそらくやけど、下っ端の組が勝手に盛り上がって動いとるいう可能性が高い」
「芦田組や島本組は知らぬ存ぜぬってわけですか」
「せや。下のモンが勝手なことやりよってくらいなもんや。今回車ぶつけたんは島本組系手島組の下っ端や。あんまり賢くない行き当たりばったりのやり方や思うとったんやけど」
千雪がそこで言葉を切った。
やけど、のあとが良太は気になる。
「何ですか?」
「その三下ヤクザが妙な難癖をつけ始めて」
「難癖ですか?」
良太にじっと見つめられて、千雪は眉間に皴を寄せてしばし言いよどむ。
「工藤さんがその三下ヤクザの女に手を付けたとか何とか、だから車をぶつけてやったとかって」
「はあ?」
良太はそれを聞くと脱力する。
「いくら工藤がエロオヤジでも、それはあり得ない」
良太は断言した。
にほんブログ村
いつもありがとうございます
