「良太は一直線なんや。他は目に入らへん。力もないくせに、平気で工藤さんの盾になるで」
「ハ、ムチャするやっちゃ。せえけど、オッサンの方はどないや? 組とは縁切っとるいうし、お前が信頼しよるからそれなりの男なんやろ。けど、そっちの方、女とかまあそれ相応にいてたやろ?」
辻はボソボソと続ける。
「まあ、工藤さんもええオッサンやし、昔はいろいろいてたやろけど、良太は特別なんや思うで? 怒鳴りまくるあの人に平気で食って掛かるとか、良太くらいやろ? やから良太のこと信頼してはるし」
「フーン。にしてもあのオッサン、そこにおるだけで迫力やもんな、警察が鵜の目鷹の目であのオッサンのあら捜しするんもわからんでもないわ」
すると千雪はフンと鼻で笑い、「それしか能がないからやろ」と言い捨てた。
「お前にかかると、警察もまるで無能な集団みたいになってまうがな」
辻は笑った。
「ほんまのことや」
「へえへえ、そうどすな」
辻はお茶らかしつつ、追い越し車線に移り、アクセルを踏んで前を八〇キロで走っていた軽を軽く追い抜くとしばらくそのまま走ってようやく走行車線に戻る。
「今朝はそう冷え込まんかったから走りええわ。念のためにスタッドレスは履いとるけどな」
「向こうはもっと寒いやろ、スタッドレスで正解や」
千雪が何やかやと辻に話しかけているうちに、辻は休憩のために由比のサービスエリアに入った。
良太は気配に気づいて目を覚ました。
「あ、すみません、俺、寝ちゃってた」
「疲れとるんやろ、寝ててええで? トイレ行く?」
千雪が言った。
「はい」
外に出るとさすがにコートなしでは寒かったが、眠気覚ましと思って、そのまま千雪と一緒にトイレに向かう。
車に戻ると、小腹がすいたという辻にサンドイッチとコーヒーを渡す。
「運転代わりましょうか?」
「ああ、ほな、一時間くらい走る? 関西圏に入ったら俺らのが道、明るいし」
そういうと、辻は少し仮眠すると言って後部座席に移った。
「安全運転で行きます」
「ムリせんでええからな」
千雪が言った。
「お任せください」
まだ薄闇の中を良太はハンドルを握る。
「東名はあんまり変化ないよって、眠うなるし、いつでも俺代わるし」
千雪は良太を気遣った。
「大丈夫です」
「遊びやったら気ぃも楽なんやけどな。ほんでも、良太、肩に力入り過ぎやで?」
「はあ……」
自分ではそういうつもりはないのだが、やはり工藤のことを考えるといつの間にか力が入ってしまうのだろう。
今日、というか昨日も工藤からは何もなかったのだが、だからこそ余計に気になってしまうのだ。
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