良太が助手席に座り、千雪が後部座席へ移って「ほな、おやすみ」と寝る体制に入った。
新幹線や飛行機ならもっと早く移動できるだろうが、辻は車もバイクも好きなようだし、向こうに着いてからの移動も車があれば有難い。
京都に入ったところで、良太はやっと工藤に連絡を取った。
「あ、おはようございます。お疲れ様です。実は、竹野さんのスケジュールの都合で今日時間が空いたのと、千雪さんが急遽ドラマのシーンで変更したい箇所があるということで一緒に京都に来てるんですけど……」
恐る恐るでは途中で怒鳴りつけられて話も中断される可能性があるので、良太は一気に言い切った。
「何だと?」
案の定、地の底から唸るような工藤の声が返ってきた。
「えっと、ついでに差し入れしようかと思いまして、お昼の予定はどうなってますか?」
唸り声は左から右の耳へ通り抜けさせて、良太はなるべく軽やかに続けた。
「………どこにいるんだ?」
明らかに不機嫌な声で工藤が聞いた。
「えっと、あとちょっとで千雪さんの家に着くところです。あ、辻さんが遅い冬休みでこっちに来るっていうんで、車に便乗させてもらってます」
「昼はまだ決めてない。弁当を持ってくるんなら小杉から連絡させる」
そういうと、良太の返事も聞かないうちにブチっと電話は切れた。
「ケッ、切れてるし」
「工藤さんやっぱキレてるて?」
千雪がクスクス笑う。
「ええ、電話も工藤もキレてます。超超不機嫌」
良太は口を尖らせて言った。
「どうせ怒るってわかってたんで超特急で用件伝えました。早い者勝ち!」
イエイ、と良太はお茶らけてサムズアップをして見せる。
千雪は「良太、ようやるわ」と苦笑する。
良太の考えた通り、貴船神社の撮影現場では、工藤が苦々しい顔で腕組みをしていた。
あのガキ!
生意気に!
ったく、何だって来るんだ!
工藤としては事故にあったとか言えば、良太が飛んでくるかもしれないと危惧して、どのみち怪我もなかったし、車もすぐ修理から戻ってきたので伝えなかったのだ。
何より、わざと相手がぶつけた可能性が出てきたことが問題だった。
言うに事欠いて俺があのチンピラの女にちょっかい掛けただと?
フン、悪いが俺はそこまで落ちぶれちゃいない。
危惧したのは、遠野の報告によるとチンピラは二十五、六そこそこの根本和也という芦田組系の手島組の手の者らしいことだ。
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