早速、千雪は見張り役をこなしている加藤らと連絡を取り、千雪の家を拠点にしようということになり、交代にここに集まることになった。
「撮影クルーが泊っとるホテルにも一人ずつ交代に部屋取っとるけど、工藤さんにバレんようにするんが一苦労や。何せガタイがでかい奴らばっかで目立つよって」
千雪の言葉に良太は笑った。
「いやほんと、変装? 大丈夫なんですか?」
「まあ、今んとこ」
千雪は携帯をいじっていたが、ラインが来て、しばしそれを読んでから顔を上げた。
「良太、柏木って知っとる?」
「柏木? 組のモンですか?」
「いや、知らんならええんや。とにかくもうちょっとしたら、予約しといた弁当受け取って、貴船神社行やな」
「ええ、お願いします」
小杉からは先ほど連絡が入り、良太が陣中見舞いに来るというので、みんな会いたがっていると喜んでいた。
しばらくまったりしていた三人だが、ようやく重い腰を上げ、車に乗り込んだ。
辻は貴船神社に良太と千雪を送り届けたら一旦実家に寄って、また迎えに来ることになった。
「弁当、全部積めるんか?」
千雪が良太に聞いた。
「何とか。この車ラゲージも広いし」
三人を乗せたBMWは四条烏丸にある老舗料理屋に寄り、予約しておいた弁当六十個分を受け取ると、貴船神社へと向かった。
弁当はあらかじめ昨日のうちに頼んでおいたので間に合ったのだが、仮に予定が入っていたとしても良太は差し入れするつもりでいた。
お茶だけ準備してもらうように小杉に頼んである。
「工藤、気づいてないと思うんですけど、加藤さんらのこと」
ここにきて、良太は少し心配になる。
工藤に知れたら余計なことをするなと雷が落ちること必須だ。
「多分な。奴らバイト学生になり切っとるし、メガネとか髭でごまかして」
「はあ」
「まあ、バレたらバレたでそん時考えたらええ」
千雪は相変わらず呑気な対応だ。
「それにほら、陰の人の弟子いうんもいてるんやろ?」
「あ、ええ、森村くん」
以前、良太が狙われているというのでやはり加藤らに警護を頼んだことがあったのだが、その時ちょうど、撮影スタッフにも元気のいい新人が入って良太は明るく挨拶されたのだが、「波多野さんの弟子でーす」とか、軽く言われて驚いたのが森村だった。
彼は日比野経由で入ってきた撮影スタッフなのだが、匠がいうには武道を嗜んでいる只者ではないヤツ、だという。
同じく合気道の有段者だという匠がいうのだから、間違いないだろう。
良太からすると明るいムードメーカーでよく動く有難いスタッフなのだが。
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