「じゃ、俺、工藤さんたちのとこから配るから、森村くん、そっちのスタッフさんの方からお願いします」
「はーい!」
良太は紙袋を二つ下げて辻と一緒に工藤らの方へと向かった。
「お、良太ちゃん、来たな」
「たまーにでも、顔見せてくれないと寂しいよ」
難しい顔で話し込んでいた日比野や浅沼が良太を認めるや相好を崩し、歓迎の言葉を口にした。
「ハハ、向こうの仕事が手一杯で。ちょっと急に時間が空いたんではせ参じました」
匠は「やっときた、良太」とにこやかに言った。
「誠も久しぶり!」
「おう」
良太の後ろで弁当を手にした辻は、工藤にちょっと会釈した。
「『ギャット』の方は問題ないのか?」
ようやくにこりともしない工藤が口を開いた。
「はい、キャリアの長い方が多いので、たびたび討論会が始まりますが、うまく機能して進んでます。『今ひとたびの』は竹野さんがちょっと外れたんでオフになりましたけど、今のところレギュラー陣も結束が固いんでスムースに進んでます」
「無難に勧めようとするなよ、マンネリ化するだけだ」
「はい」
こうやって時々、うかうかしてんなよ、良太、と、鬼の工藤に肩を並べようなんざ千年早い的な格が違うんだぞという指摘をくださるから、良太は神妙な顔で肝に銘じなくてはならなくなる。
「あの『貴様と俺』ってタイトル、仮、なんですよね?」
良太は前々から気になっていることを口にした。
「気に入らないんならまともなタイトル考えて、坂口に進言すればいいだろう」
「あ、はあ」
今さら、俺がですか、なんて聞けない。
だが、工藤がまともなタイトル考えてと言うくらいだから、今のタイトルはまともじゃないと思っているんだろう。
「皆さん、お茶どうぞ」
弁当を配り終えた森村がお茶を運んできて配り始めた。
「良太ちゃん、来たね~」
そこへ志村と小杉がやってきた。
「向こうの仕事、面白くないんだな?」
志村にからかわれて良太は「まあ、面白くないこともありますけどね」と苦笑した。
「そういえば、車、事故ったって聞きましたけど」
良太は工藤を見た。
「フン、後ろからちょっと追突されただけだ。もう車も戻ってきている。怪我をしたわけでもない」
簡潔に工藤は説明した。
これはやはり工藤に詳しく聞くなんて無理そうだと良太は一人頷いた。
また日比野や浅沼と話を始めた工藤を横目に、良太は千雪や辻、匠らと固まって屋外用のストーブの囲む折り畳みイスに陣取った。
さすがに寒い。
良太は匠に聞かれるまま、辻の車で千雪とともに明け方東京を出たことから東京でのドラマ撮影のことなどを話した。
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