「明後日あたりから雪みたいなんで、撮影陣焦ってるんですよね」
良太がぽつりと言った。
「ああ。雪のシーンとかは撮らんの?」
「それはそれで撮影あるんですよ」
「あとどのくらい続くん?」
問われて良太は首を傾げる。
「予定ではあと一週間ですけど、問題なくいけば。だから、余計なことに工藤を煩わせたくないんですよね」
千雪は頷いた。
「一回りしたから戻ろ。寒うてかなわんわ」
「何か、役にたったんですか?」
「まあ。せや、ドラマ、近いうちにここでロケする? 気になるやろ?」
良太はえっと千雪を見た。
「そういきなりは」
といいながら、良太はスケジュールを何とか動かせないかと急速に脳みそを働かせている。
「雪の神社のシーンやないとあかんてことにして」
「うーん、映画の撮影の邪魔にならないようにすり合わせができればですけど」
登ってきた階段を下りながら、良太は山根監督に連絡を入れた。
「あ、はい、小林先生が、その例の凶器を隠すシーンで『雪の神社』が必要だっておっしゃるんですが」
携帯で話しつつ、良太は千雪を見た。
「はあ、まあ、できれば、明後日あたりからこの辺り雪が降るらしくて。竹野さんのスケジュール次第ですけど」
千雪の原作では、犯人が凶器を神社の境内に隠すというシーンと、さらに竹野扮する新聞記者が、捜査線上に浮かんだこの神社に自分で行ってみるというシーンがある。
「うーん、そうだな、珍しく千雪さんのご要望とあれば極力沿いたいが……」
当初、竹野が行くにしても、冬という設定はあったが雪が降っているという設定はなかった。
山根は脚本家の久保田と話してみて、連絡を入れると言って電話を切った。
「結構、ムチャぶりですよね~」
良太はぽつりと言った。
「んなもん、当たり前や」
あっさりと千雪は開き直る。
「良太の権限でやります、ゆうたらええんや」
「俺に権限なんかないですってば。監督がうんと言えば、竹野さんに打診してみますが」
二人がそんな会話をしながら階段を降りていくと、撮影は今休憩に入ったところだった。
ちょうど工藤が振り返って良太と千雪に気づくと、「お前ら、二人で何こそついてるんだ?」と怖い顔で尋ねた。
「こそついてって、だからドラマのシーン、雪の設定が必要って千雪さんが。それで近日中にちょっとロケにって監督と話してるんですけど」
「なんだそれは?」
益々渋い表情で工藤は二人を睨み付ける。
「あ、でも竹野さんのスケジュール次第ですし、こちらの撮影のお邪魔にならないようにしますけど」
すると工藤はフンと鼻で笑う。
「決まったら連絡しろ」
「はい」
良太はちょっと胸をなでおろす。
千雪の申し出なので、工藤も強くは出られないからだろうが、一応承諾を得たようなものだ。
ってことは、もう一度、こっちに来られるか?
いずれにせよ、山根監督と竹野がOKを出さない限り、難しいのだが。
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