「どうも女子社員は事務職以外の方が多いらしいで、あの会社」
辻がまたラインを確認しながら言った。
「加藤さんからですか?」
良太が尋ねた。
「いや、俺の昔の仲間や。あちこちにおるからその辺の情報どうやて聞けば、いろいろ教えてくれよる」
「地に足がついたネットワーク?」
「せや。みんなそこで暮らしとるよって、どっかの調査員が嗅ぎまわるより確かな詳細がわかるいうもんや」
「なるほど。今も結束固いってそういうことなんですね」
良太は頷いた。
「まあな、昔やんちゃやっとった奴等も今はごく普通のおっちゃんおばちゃんやからな」
「はあ」
やがて『鞍馬』に着いて、店に入ろうとした時、良太のポケットで携帯が鳴った。
「おう、そっち順調?」
沢村だった。
今はCMのロケで、プラグインの藤堂やクリエイターの佐々木とともに北海道から沖縄に場所を移して撮影を行っているはずだ。
「順調。明日は関西タイガースのホームグラウンドで撮影」
心なしか得意げに沢村が言った。
「佐々木さんに面倒かけてないだろうな? ただでさえハードスケジュールなのに」
自分がついて行けないのが、良太としては申し訳なく思う。
「かけるかよ! 佐々木さん、メチャ元気で厳しいくらいだ」
「ああ、佐々木さん、仕事に入ると半端ないもんな」
「フン。お前はどうなんだよ、毎日ドラマの撮影だろ?」
「いや、今、京都。ドラマの関係で千雪さんと」
これもウソではない。
「京都? お前も暇なしだな。寝込むなよ」
「誰が寝込むかっ! 佐々木さんを寝込ませるなよっ!」
沢村のからかいに、しっかり釘を刺して良太は携帯を切った。
「仕事、平気か?」
良太が追いつくと、千雪が聞いた。
「ああ、沢村です。今CMのロケで北海道から沖縄に移動して」
「そっちも忙しいな。野球選手はオフやないと動きとれんもんな」
「ええ、まあ」
それはそうなのだが、今回はずっと佐々木と一緒に居られるわけで、沢村としては仕事がどれだけ大変であろうと何のその、という感じだ。
やっぱ好きな人とは少しでも一緒に居たいよな。
「良太ちゃん、こっち!」
奈々が良太たちを見つけて手を振った。
広い店内には撮影クルー四十名ほどが集まっていたが、他の客もいるので、あまり騒がないようにという指令が監督から出ている。
その時、匠からと森村からもラインが入り、良太は文字を読んで少し表情を硬くした。
「どないした?」
すぐに千雪が良太のようすに気づいて顔を覗き込む。
「モリーからや。俺とお前、モリーと匠の横が空いてるらしいぞ」
辻も自分の携帯を覗き込んでいる。
千雪は森村と匠を見つけ、その向かいに志村と小杉がいるのを確認したが、志村の後ろのテーブルにいる男女を見て、目を眇めた。
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