「一段落ついたから、お弁当買いに出るけど、良太ちゃんどうする?」
鈴木さんが立ち上がりながら良太に聞いた。
「あ、お願いしていいですか? 鈴木さんにお任せしますから」
「わかった。行ってきます」
鈴木さんがオフィスを出ると、良太はまたキーボードを叩き始めたが、そう言えばと気になったのが、先日沢村がここで小田と話していった件だ。
「盗聴器とか、万が一仕掛けられてたら、まずいよな」
これは緊急に調べる必要がある。
千雪から早く連絡が来ないかと思いつつ、携帯を睨み付けた。
一方、フジタ自動車の打ち合わせが終わった工藤は、今朝がた連絡を入れていたMEC電機に向かっていた。
港区芝にあるMEC電機本社に着き、青山プロダクションの工藤と受付に告げると、すぐに広報部へ上がるエレベーターに案内された。
広報部のある二十階で降りると、小さな会議室に通され、しばらく待たされた。
要件は、青山プロダクションの南沢奈々がイメージキャラクターに決まっている冷蔵庫のCMの件ということにはなっているが、無論、今日工藤がわざわざここに来たのはそれとは何の関係もない。
「お待たせしました」
お茶を出した社員が会議室を出て行くと、代わりに広報部長である波多野が現れた。
「ここは携帯の電波を遮断するようになっていますし、常に盗聴器等も私がチェックしていますから、ぶっちゃけても結構ですよ」
波多野の言葉を受けて、険しい表情を崩そうともせず、工藤は口を開いた。
「一体全体、何であのババアがしゃしゃり出て、しかも良太なんぞを部屋につれこんだりしやがったんだ?」
工藤はできる限り声を抑えながら言い放った。
「ですからそれは、やはりあの動画がネットに拡散したせいでしょう。魔女の目にもとまるほど広まったということですね」
「だから何でそれが拡散したことで、ババアがでてくるんだって聞いてる」
「残念ながら私は先代の命を受けてはいますが、魔女とは言葉も交わしたことはありませんから、魔女の思わくは存じあげませんが……」
そこで波多野は少し言葉を切った。
「良太の家族まで調べまくったということは、あなたが良太を大事にしているとわかったからでしょうね」
工藤はまた苦々しい顔でどこと言うこともなく睨みつけた。
「なぜ魔女にそんなことがわかったかとかは聞かないでくださいよ。私にわかることではありません。が……おそらく」
工藤は視線を波多野に戻した。
「おそらく、魔女の勘ってやつでしょう」
「勘だと?」
「いや、そう感じたのは魔女だけじゃないかもしれませんよ。まあとにかく、どんな相手なのか知りたかったんじゃないですか?」
淡々と波多野は言った。
「だから良太を部屋に連れ込んだって言うのか? 何のために?」
波多野に聞いてわかることではないとは重々知りつつ、工藤は聞かないではいられなかった。
「これは私の勘ですが、魔女は何も良太をどうこうするつもりはなかったと思いますよ。現にちゃんと返してますからね」
「問題は良太をわざわざ連れ込んだことだ! あのくそババア!」
工藤はドンとテーブルを拳で叩く。
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