霞に月の14

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 野口新はランドエージェントコーポレーションの本社社長である。
 高校時代に海老原と野口の二人は付き合っていたが、元外相の祖父らに引き裂かれたとかで、海老原は海老原家の恥だのなんだのと言う祖父の言うことなど聞く耳をもたなかったものの、野口は代々海老原家とは近しい付き合いをしていたため、状況を考えて海老原に別れを告げたらしい。
 それに怒った海老原は男たちと遊び歩いた関係をネットで拡散させバイを公表し、祖父を激怒させたが、ネット上に流れた情報はもはや祖父にもどうすることもできず、勘当を言われる前に海老原はとっとと渡米した、という話を、小笠原を通じて美亜から良太も聞いていた。
 そういえば、確か、最近海老原も野口もそれぞれの相手と別れたとかいう話もついでに聞いた気がするが、忙しいばかりの良太には彼らのことにかまっている暇はなかったのだ。
「礼央もあたしもアメリカ国籍はあるし、新ちゃんももう何年も前にグリーンカード取得してるし。礼央、結婚もできないような日本なんかに住みたくないとかって、向こうに新居買ったみたい」
 美亜が淡々と説明する。
「はあ、それは………、おめでとうございます」
 それしか言葉が出てこない。
 はっきり言って良太は海老原はあまり好かなかった。
「お爺様、石頭なのよね。あれじゃ、今の人たちについていけやしない」
 美亜はケラケラと笑う。
「はあ」
 元外相も美亜にあってはかたなしというところか。
「まあ、いんじゃね? 幸せなら」
 小笠原は相変わらず軽い口調で笑う。
 佐々木と沢村は二人花を見上げ、千雪とアスカ、それに紗英がいつのまにか楽しそうに語らっている。
 宇都宮と坂口、それにひとみや下柳が工藤を囲んで何だかだと言い合っている。
 森村と直子はどうやらメタルの話で盛り上がっているようだ。
 周りを見回して良太は微笑んだ。
「お疲れ様」
 振り返ると秋山が笑みを浮かべていた。
「秋山さん。佐藤製作所の事件、うまくいきそうでよかったですね」
「ああ。佐藤さんも専務の彰吾が捕まったんで、父親の介護に専念するそうだ」
「それはよかったですね」
 これでアスカさんの懸念も完全に消えてくれると思いたい。
 良太の本音はそこにある。
 ただ、またアスカさんがあんな風に傷ついてしまわないでほしいと。
 秋山はアスカの想いをまだ知らないようだ。
 当の秋山はしかしアスカをどう思っているのだろう。
 だが秋山が何を考えているのか、未だによくわからない。
「良太、適当な時間に切り上げるぞ」
 工藤の声にはっとして良太は顔を上げた。

 


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