「寒うはないけど、なんか、ええなあ、炬燵て」
千雪は炬燵に脚を突っ込んで和んでいた。
「はあ、結構この部屋にくると、みんな炬燵に根がはえるみたいで」
良太は苦笑した。
二月半ばには、この狭い部屋に何人もが押し掛けて酒盛り状態だった。
「へえ、妹さん、彼氏連れて来たん?」
ワインのグラスを合わせて、炬燵で呑みながら二月の話をすると、千雪が聞いた。
「まあ、あいつ、昔から大抵彼氏できると紹介するんですよ」
「できた妹さんやな」
確かに、自分よりずっとしっかりしているだろうと良太は思う。
「まあ、しっかりしてるっつうか、小うるさいっつうか。俺のことも何だかだと突っ込んでくるし」
「心配しとんのやろ? 工藤さんのこと話したん?」
「まさか ! ってか、薄々勘づいててあいつ」
両親の反応をさりげなく探るとか言っていたが、あれから亜弓からの連絡はない。
「それやったら、話したらええやん」
千雪は軽く言う。
「簡単におっしゃいますけど、そう簡単には言えませんよ」
「何で?」
「そもそも、千雪さんと京助さんとかとは、違いますから」
声がボソボソと尻すぼみになる。
「何が違うねん? 工藤さんと良太が付き合うとんのは、社内でも仲間うちでも周知のことやろ?」
断言するように言われて良太は眉を顰める。
「違いますよ」
良太ははっきりと口にした。
しばし間があったが、千雪が「何が違うん?」と聞いた。
「工藤さん、年くうてるから?」
千雪の揶揄っぽい言い方にも良太は反応せず、口を閉ざす。
「まだ、良太が好きなだけやからとか思うとるん?」
「それはまあ、多少は俺のことを大事に思ってくれてるってことは感謝してます」
「感謝て………」
千雪はふうっと大きく息を吐いた。
「何より、工藤さんと俺とは、社長と社員ですから、仕事がまず第一ですし。ってか、何かやっぱ、俺、近いとこに居すぎるんかなとか」
「何やそれ」
千雪は苦笑した。
「俺は、工藤さんのこと好きですよ。好きだから、やっぱ幸せでいてほしいと思うじゃないですか。でも、あのオヤジ、てんで後ろ向きで、時々、俺に何かあったら会社はお前に任せるとかなんとか、ふざけるなって!」
ついつい良太は感情に任せて激高してしまう。
「いや、経営者としてはそれちゃんとしとかんと。そら、良太としてはそんな縁起でもない話、聞きとうないて思うか知れんけどな」
「それはわかりますけど、それだけじゃなくて、あのオヤジ、いつ死んでも構わない的な生き方してっから!」
こんなことは誰の前でも話せることではない。
良太も相手が千雪だからこそ、酒の力もあって口にしてしまったというところだろう。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
