良太は猫たちにご飯をやり、着替えると、軽くサンドイッチで夕食にして、車で高輪へと向かった。
工藤に言われてから、空いた時間に高輪のジムへ週一、二回通っている。
お陰で身体の調子が前よりいい感じだ。
「でも、あれか。もし、そのイベントで、工藤に誰かが見つかったら、ジムも行けなくなるなあ」
つい口にしていた。
やっぱ仕事も続けるのって難しいかな。
せっかく、手応えがあるプロジェクトに参加できると思ったのだが。
とにかく前に進むしかないか、と良太はハンドルを切った。
その翌々日、プロ野球公式戦開幕を前に、前々から進めていた日本の文化を扱ったドキュメンタリー番組の撮影で、良太は佐々木家を訪れていた。
茶道陽成院琉師範である佐々木の母、佐々木淑陽氏の撮影は終わっていたが、クリエイターの佐々木が関わっているCMプロジェクトが長引いたために、後に続くべき淑陽の弟子であり息子である佐々木の撮影にここにきてようやく着手できたのだった。
撮影を観たがっていた沢村は開幕戦に備えて既に関西タイガースのホームに向ったので、良太としては、ここにいたら何だかだと煩く口を出しかねない沢村がいないことが有難かった。
オフィスササキの社員で佐々木のアシスタントを務める池山直子は、近年淑陽氏に茶道を指南しており、今回は茶道の弟子ということで佐々木とともに撮影される側に回っている。
早朝から始まった撮影だが、道具の扱いや立ち居振る舞いなど佐々木の一挙手一投足に淑陽氏の指導が入るため、結局終わったのは夜八時頃で、それから良太も片付けなどを手伝っていたため、佐々木邸を出たのは十時を回っていた。
直子を送るべく、車に乗せて永福町へと車を走らせた良太は、直子の方から異業種交流会の話を持ち出された。
「藤堂さんから聞いて、参加してみよっかなって」
助手席の直子は笑って言った。
「だって異業種っていうからいろんな人が集まるみたいじゃない?」
「そうだね。モリーがさ、合コンしたいってずっと言ってたから、この異業種交流会もすごい楽しみにしてる」
「モリー、日本に来てそんな経ってないし、知り合う機会とかあんましないからねえ」
直子の口ぶりだと、森村と直子はやはり仲のいい音楽仲間ということのようだ。
「千雪さんの話だと、年齢性別職業関係なしでって」
「でも、紫紀さん主催なんでしょ? やっぱ誰でもってわけにはいかないよね」
ちょっと小首を傾げて直子は言った。
「そうだね。もちろん、成人前提だし、ある程度身元はっきりしてないとまずいかもね」
「うちの古巣、ジャストエージェンシーの美紀ちゃんとか、参加したいっていってるけどいいよね?」
直子が聞いた。
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