「だけど工藤さん、こういう反社会勢力とか政治家が大嫌いで」
香坂はフフっと笑う。
「昔からヤクザ嫌ってたよ。でもそもそもなんで、高広がヤクザに狙われるわけ?」
「はあ、それは、おそらく、跡目争いのせいで。主に二つの組系列が争ってて、工藤さんを担ぎ出されたら困る連中が工藤さんを巻き込んでるっていう」
良太は枝葉末節を省いて簡単に説明した。
「なるほどめんどくさいねぇ。高広も関係ないって言ってればいいわけじゃないんだ」
香坂は頷いた。
「ええ。でもだから、あの人、家族も作んなくて。俺は、香坂先生みたいな人となら、工藤さんも家族を作れるんじゃないかって思うんですよ」
香坂は良太を振り返った。
「いやあ、あんな苦虫面してるくせに高広は幸せもんじゃない。良太ちゃんみたいな上司想いの社員がいて」
香坂の言い草に良太は思わず笑みを浮かべる。
「こいだ高広に会った時……」
言いかけた香坂はドアが開いて赤ら顔が入ってきたので口を噤む。
「何コソコソしてやがる」
赤ら顔がまた香坂に近づいたので、「トイレ、行かせてください! 漏れそうで」と良太は咄嗟に訴えた。
「私も限界」
香坂も追随した。
「漏らすと臭いわよ」
赤ら顔はするとちっと舌打ちして、まず香坂を立たせてトイレへ連れて行った。
香坂の後ろ姿に目を向けて、絶対香坂を助けなくてはと良太は思う。
何人いるんだろ、そう大勢いる気配はないけど。
やがて香坂が戻ってくると、今度は良太を立たせて、赤ら顔はトイレへ向かう。
「大の方なんだけど」
良太はとにかく個室に入って携帯で連絡を取ろうと必死に言い募った。
「早くしろ」
赤ら顔は仕方なさそうに良太の手首を縛る結束バンドを外した。
個室のドアを閉めると、良太は早速ポケットから携帯を取り出した。
何件もあちこちから電話が入っている。
工藤も何度かかけているようだ。
とにかく、千雪と森村に、『本牧ふ頭、さっきの倉庫と同じSNNって倉庫会社の建物。今トイレ』と簡潔にメッセージを送る。
すぐに、『無事か? もうすぐ着く』というメッセージが千雪から来た。
森村からは、『工藤さんに知られた。やつら女を預かってる連絡した。秋山さん谷川さん向かってる』というメッセージが届く。
ラインの音声入力を使っているのだろう、箇条書きのような文章だ。
工藤に知らせたのか。
ってか、動いてるのかよ、波多野さん!
良太はイラつきながら、『早く』まで文字を打ったところで、「何やってんだ!」とドアがどんどんと叩かれたので、慌てて送信して携帯をポケットに仕舞い、トイレの水を流した。
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