結局、市街に戻って撮影が終わるのを待っているともう七時近くになってしまった。
続けて工藤の誘いを断ったことに、後ろ髪を引かれるような思いにかられつつも、撮影現場にタクシーが着く頃には、やっぱりもうそういうことなんじゃないかな、と諦めの境地で良太は一層また背中が重くなったような気がしていた。
ちょうど本谷のシーンだったのだが、本谷の科白がいつになくまずい出来で、二度のリテイクに本谷もひどく恐縮していた。
体当たりでやれって、昭和のオヤジかよ。
そういうの、本谷とかに通じるんかねえ。
俺よか二つばかりしか違わないはずだけど、今時の子は、そういうの、敬遠するんじゃ……。
あ、でも、あの工藤のこと好きってくらいだから、工藤に言われれば、張り切ってやるんじゃねえ?
高校の野球部あたりだったらまだ、そういう昭和のオヤジ的なコーチとかいたけどな。
「良太ちゃん、ちょっと」
山根がおいでおいでをしている。
何か嫌な予感がした。
「本谷なんだけどね」
隅の方に引っ張っていかれて、開口一番、あたりだった。
「はあ」
「うーーーーん、いっつもじゃないんだよ。いい味出してるって時もあるし、表情なんかはね、及第点なんだけどさ」
これはほんとに何とかしなければ。
「あの子、ずっとマネージャいなくて一人だろ? なかなか話聞いてやる人もいないじゃない? そういうのも大事だからね~」
「そうですね、実は工藤にも言われてて、俺、ちょっと話してみますから」
とは言ったものの、差し当たってこれという打開策があるわけではない。
とぼとぼと肩を落として良太はタクシーがなかなか捕まらないので地下鉄でホテルへと向かった。
当の本谷は久保田がホテルまで一緒のタクシーで行ったようだった。
久保田も何か考えるところがあるのかもしれない。
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