流なんぞは、それ見たことかと渋面を良太に向けていた。
うう、責任重大じゃん!
千雪さんに相談してみようか。
いや、あの人、ドラマとか映画とか、自分の手を離れたらもう知らない、って人だしな。
本谷、ホントに適当に選んだつもりはないのだが。
千雪さんにも説明した通り、あの人、最近CMにも何本か出てるし、テレビに映ってる可能性が高いわけで。
とにかく本人と少し話しをしてみないとな~
「わ、もう七時過ぎてる」
ホテルのフロントでカードキーをもらい、予約してある自分の部屋へとまず向かった。
極力荷物は少なくしようと、リュック一つに最低限必要なものを入れてきた。
「はあ、ホントはもうこのままベッドにダイビングしたいとこなんだけどな」
急いでジャージの上下に着替えると、翌日のためにスーツとワイシャツをクリーニングに出し、七時十五分頃、アスカの部屋のチャイムを鳴らした。
「お疲れさま。ご飯もう来てるよ」
リビングのテーブルには和牛の陶板焼きメインの食事が用意されていた。
「お邪魔します~、うわ、美味そ! ああ、いきなり腹減ってきた」
刺身や和え物、それから焼き物、煮物、椀物など彩り豊かに湯気がまだ立ち上る料理の数々が目を刺激する。
「食べよ食べよ。あたしも待ってるうちお腹なっちゃったわよ」
腹が減ってる時、美味いものの前にはどんな悩みも仕事のあれこれも吹っ飛ぶのだ。
いただきますもそこそこに、料理によく合う冷酒をやりながら、しばらくは口数も少なく良太は健啖ぶりを発揮した。
アスカも、毎度のことながら、女優がこんなに食べてもいいのかと良太が心配するほど、一通り平らげる。
「やっぱり、夏はこれに限るわね~」
デザートは見るも涼し気な笹の葉に包まれた水ようかんだ。
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