風そよぐ102

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 熱いお茶を良太の湯飲みにも注いで、アスカは最後の一口まで食べきった。
「はあ、くったくった」
 オヤジも真っ青なセリフに良太は眉をひそめて、「それ、俺らくらいの前だけにしといてくださいよ」と窘める。
「けど俺も、能登以来だな、こんなしっかりご飯食べたの。高雄往復してまた烏丸行ってって、結構歩きましたからね」
「高雄、あたしも行きたい~。秋山さんがそんな余裕ないっていうんだけどさ」
「まあ、ちょっと今回は我慢してください。スケジュール結構タイトなんで、アスカさん、NBCのドラマもでしょ?」
 コメディタッチのドラマのヒロイン役で、そちらは冬の放映予定なのだが、『からくれないに』が入ったので、何日かオフも込みの余裕のスケジュールがきっちり埋まってしまった。
「まあねぇ。こっちはユキのドラマだし、流のライバルだからキャラはもろあたし本人だからいんだけどさ」
 小林千雪の原作のドラマで、主演の大澤流のライバルの役で、既に同じ役で出演しており、その役はまるでアスカ本人かという雰囲気なのだ。
 ああ、あれはアスカさんモデルで書いたしな。
 当て書きというわけではないのだが、千雪もそう言っているように本人がやればそのままでOKくらいな役なのだ。
 さらに言えば、青山プロダクションにワケありではなく入ったのは、映画のオーディションで決まった南沢奈々の他は、小林千雪の原作を映画化したという理由だけで会社に移籍したこのアスカ以外いない。
「大体、『田園』なんか、ほんのチョイ役って聞いてたのに、坂口さんメチャあたしのキャラ出番増やしてくれるんだもん」
「はまり役だと思ったんでしょう。坂口さんって、いいと思うとどんどんやらせるっていう人みたいだし」
 うん、アスカさん、それこそいい感じだもんな。
「それで、いつ本谷が工藤さんラブだって気づいたのよ、良太」
 それはね、ってうっかり言いそうなくらいの自然な展開で、アスカが聞いた。
「は……? 何ですか、それ………」

 


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