風そよぐ108

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 切り抜けられるかどうかで、本谷の今後にも影響するだろう。
「にしたって、あの子のマネージャー、いくら何でも放りっぱなし過ぎない? いくら大手だっていってもあの事務所、何考えてるんだか」
 ひとみは文句を言いながらグラスを空けると、お代わりを頼んだ。
「思いのほか今までの仕事が順調だったんで、本人に任せてれば何とかなると思ってるんだろう。あの事務所は人手不足というより、手を抜きすぎだ」
「ふーん、それで高広が本谷の面倒を見てるってわけ?」
 何やら意味ありげなセリフに、工藤はひとみを見た。
「でもさ、本谷ばっかにかまけてないで、気にかけるべき相手は他にいるんじゃない?」
 誰のことを言っているのかすぐにわかって、工藤は眉根を寄せた。
「まさか高広、本谷に鞍替えしようなんて思ってるんじゃないでしょうね?」
「何だ、それは」
 イラついて工藤はグラスを空ける。
「身に覚えがなければいいんだけどさ」
 そこで言葉を切って、ひとみはグラスの中の琥珀色をしばし眺めた。
「このままほっとくと、宇都宮にとられちゃうかもよ?」
 ひとみまで知っているのかと、増々苦々しい顔の工藤の前に、新しいラム酒が置かれた。
 くそ、宇都宮のやつ、札幌の時から良太を妙な目で見やがって。
 だがまさか、実際、工藤のオフィスにまで現れて良太を連れていくような真似をするとは思わなかった。
 しかも朝帰りだ。
 しっかり宇都宮が送ってきていた。
「良太のやつがそういうつもりなら、仕方ないだろう」
「ちょっと、何よそれ!」
 ひとみの声は意外に大きく、他の客が二人を振り返った。

 


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