風そよぐ111

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「何で知ってるって顔ね? だって『田園』の頃から、いつもならそこまで人のことを気遣ったりしない高広が、本谷のこと気遣ってたじゃない? 第一、鬼の工藤の顔を見て喜んで飛んでいくなんて、本谷見てりゃわかるわよ」
 勢いバーテンダーにお代わりを頼みながら、ひとみは矢継ぎ早に言った。
「ちゃんと断ったんでしょうね? 付き合ってる相手がいるって本谷に言ったの?」
「そんなことまで言う必要はないだろう」
 どうやらかまをかけられたと思った時はもう遅かった。
「何でよ?」
「そこまで大ごとな話じゃないだろう」
 はあ、とひとみは大きくため息をついた。
「これだから、わかってないっていうのよ。あのね、好きになった相手が気遣ってくれてるのよ、もう本谷なんか舞い上がっちゃってるわよ。可哀そうじゃない、逆に期待持たせてることになるのよ?」
「ああ、わかったわかった」
 ひとみは声は落としているものの、耳元でキイキイ言われると工藤は頭痛がしてきそうだった。
「まったく。ちゃんと良太ちゃんに誤解させたこと謝ってよね。あたしたちだってほんと心配したんだから。宇都宮のとこで鍋やった時、酔っぱらって急に引っ越すだのなんだの言いだすから、良太ちゃん」
 はたと、工藤は何杯目かのラム酒を口に持っていこうとして、「鍋? 宇都宮のとこってなんだ?」とひとみに聞いた。
「だから、先週の水曜日、宇都宮のうちで鍋やったのよ、良太ちゃんとあたしと須永とで」
 水曜日?
 宇都宮がオフィスにわざわざ良太を迎えに来たとか、鈴木さんが言ってたが。
「四人で、宇都宮のうちで?」

 


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