風そよぐ112

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「そうよ、前から宇都宮と暑くなる前に鍋やろうねって話してて、良太ちゃんも込みで、やっとオフになったから、でもあのだだっ広いリビングで四人で鍋囲んでって笑えるわよ。宇都宮、料理はうまいわね、アクアパッツァなんかプロ顔負けだったわ」
「ほう? アクアパッツァね」
 四人、ね。
 二人、じゃなかったわけか。
 工藤の心の呟きを知らず、ひとみは話を続けた。
「途中で、須永と良太ちゃんの身の上相談会みたくなっちゃってさ、そしたら広いから引っ越すんならここでシェアしようとか宇都宮が良太ちゃん誘ってきて」
 ホテルの車寄せでタクシーに乗り込む前にひとみは振り返って言った。
「早いとこ良太ちゃんの誤解を解いてやらないと、宇都宮、あれ、ガチだわよ」
 ひとみの脅し文句に煽られるまでもなく、誤解、なら話は別だ。
「いいから、早く行け」
 しかしあのバカときた日には、周りはよく見てるくせに自分のことになると何でああも超鈍感なんだ。
 また眉根を顰めてムスッとした顔で不機嫌オーラを振りまいて部屋に戻った工藤は、すれ違ったホテルのコンシェルジュが、後で怖わ…と呟いたのを知らなかった。

 早朝から路地などのロケが行われていた。
 アスカやひとみなどは、疲れなど微塵も感じさせないところがプロたる所以だと、良太はそのバイタリティーに感心する。
 無論、ビタミン剤やらマッサージやストレッチやら、様々な努力はしているはずだ。
 本谷とは撮影に入る前に少し話ができた。
「何度もやり直しているうちに、むしろ逆に変になってしまって………」
 どうやら混乱して泥沼化しているらしいと、良太は見て取った。

 


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