風そよぐ113

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 確かに出番が多いし、つまりは科白も多いということで、覚えることや間違えないことにどうしても神経がいって、言葉がぎくしゃくしてしまうのだろう。
 はあああ、と長い溜息をついて、本谷は肩を落としている。
「どうしよう、俺、小林先生が指名してくださったってのに、こんなんじゃとても………」
 そんなこともプレッシャーになっているらしいと知ると、良太は罪悪感が胸をチクチクと刺すのを覚えた。
「あのーーー、いや、俺は俳優ではないので、おこがましいんですが、俺の黒歴史からすると、その小林先生が、とか、間違えないようにとか、そうやって構えすぎると余計力入っちゃって、固くなりますからね。俺も当時、ガチガチになってセリフももっとひどかったんですよ、でもその時………」
 と前置きして、
「俺は、俺、そのまんま普通でいいから、アスカさんとおしゃべりすることだけを考えてればいいんだよ…………、って、誰かが言ってくれたんです」
 すると、俯いていた本谷が顔を上げて良太を見つめた。
「こう、周りをもうシャットアウト、みたいな?」
 通じるかどうかはわからなかったが、身振り手振りで良太なりに本谷の強張りを解いてやりたかった。
「まあね、昨日高雄に行ったら、体当たりでやれって言っておけとか、昭和なオヤジなことを工藤が言ってましたけどね」
 思い出すとしかめ面になりつつも良太は伝えた。
「体当たりで………、ですよね。ほんとに申し訳ないです。工藤さんにも色々ご迷惑をおかけして。工藤さん、最近随分お疲れのようなのに」
「まあねぇ、いい年なんだからちょっと考えて動けばいいのに、好きで動いて黄昏てるんだから、本谷さんが気に病むことなんかありませんて」

 


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