風そよぐ115

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 十時くらいには向こうに着けるだろう。
 『パワスポ』のクルーや局アナの市川美由と合流して、沢村の取材をさせてもらう手はずになっている。
 午後一時くらいには球場入りするはずなので、今チームがリーグ二位に浮上したことや、交流戦真っ最中の成績を踏まえて今夜のゲームへの意気込みなどをインタビューする手はずだ。
 しかし夕べ四の一で、ヤジも飛んだから、沢村のヤツいつにも増して不機嫌だよな、きっと。
 十二時四十五分、現れた沢村に市川がインタビューを始めた。
「もちろん目標は優勝です。チームの調子も上がりつつありますし、自分の調子も大体安定してきているので、極端に落ちることなくいければいいかと思っています」
 良太の危惧に反して、沢村はよどみなく答え、「三冠王を狙っているか」という市川の問いにも「狙うことでチームへの貢献になればもちろん」と締めくくった。
 インタビューが終わって、お疲れ様をした直後、「良太、ちょっと」と良太の腕を掴んでクルーや周りの人の群れから離れたところまで移動すると、沢村が言った。
「お前、こないだ、佐々木さんと温泉に行ったって? 藤堂のやつも一緒だったんだってな」
 何かと思えば、意識はそっちにいってるのか。
 佐々木が話したらしい。
 佐々木にしてみれば、最近のできごとくらいな感覚で話したのだろう。
「何で俺に言わねえんだよ!」
「お前、仕事だぞ? お前にイチイチお伺い立てる必要あるかよ。それに、うっかり言って、またタイムテーブルを駆使してお前がトラベルミステリーもどきを決行しないとも限らないからな」
「うっせーよ」
 二月に知り合いが集まって軽井沢でスキー合宿となった時、佐々木に会いたいがために電車のコンコースを走りまくって、キャンプ地の宮崎から飛んでくるという荒業をやってみせた沢村は、当然佐々木に怒られて、一時はゲーム中は合わないなどと宣言されてしまったのだ。

 


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