とりあえずその宣言は撤回させたようだが。
「今月は交流戦で目いっぱいで、いくら俺でもそんな余裕はない」
「あたりまえだ」
「にしたって、温泉に行こうって佐々木さんに何度も誘ってるのに、なんでお前と温泉なんだよ」
「仕事だぞ。まあ、温泉もホテルも食事もこの上なしだったけどな」
ちょっと沢村を羨ましがらせてやる。
「くっそ! シーズン終わったらぜってぇ温泉だ!」
「お前、よく一緒に箱根行ってたんじゃないのかよ?」
「箱根じゃ地元過ぎて行った気にならねぇ」
「贅沢モノめ!」
「次会えるのって、そのアディノのCM撮影ン時くらいなんだよ」
そう言われると良太もちょっと沢村が可哀そうにもなる。
「ああ、オールスターの前? 大阪のスタジオか」
七月中旬、前々から決まっていたスポーツウエアブランド『アディノ』のCM撮影は、沢村のスケジュールの都合でその日くらいしかないのだ。
秋には放映予定となっている。
「しょうがないだろ、佐々木さんも忙しいんだし」
良太が言うと、やんちゃ坊主が愚図っているような顔で沢村は、「わかってる。じゃあな」とムスッとしたままウォーミングアップに向かった。
とりあえずはまあ、昨日は四の一でも調子は良さそうだ。
久々沢村の顔を見たら、負けてられないという気にもなる。
「何か、広瀬さんと沢村さんってすっごく仲いいんですね」
帰りは市川と一緒の新幹線で帰ったのだが、しばらく野球談議をしていて名古屋を過ぎた頃、隣りに座る市川が思い出したように言った。
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