風そよぐ118

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「今頃の京都も、雨が降ったりして風情がありそうねぇ」
 鈴木さんと窓側のソファセットでおたべを前にお茶をしながら、良太はしばらくまったりと本格的に振り出した雨の街並みに目をやった。
「娘と今度京都に行きたいって話してるのよ。夏の京都もいいわよね」
「いいですね。七月に連休あるし」
「そうだけど、良太ちゃん、仕事はどうなの? 工藤さんも相変わらずお忙しそうだし」
「俺や工藤さんのことはお気遣いなく。いつも留守番とか、猫のお世話とかお願いしてて、申し訳ないばっかだし」
 鈴木さんはふふふと緩く笑った。
「あら、いいのよ。猫ちゃんたち可愛いし、癒されるわね、あの子たち見てると」
「いつもありがとうございます」
「京都っていえば、そうそう、川床料理、工藤さんにごちそうしていただいた?」
 何気ない鈴木さんの言葉が良太の胸をチクリと刺した。
「…いえ、時間なくて………」
「撮影、また京都でもあるんでしょ? 次はごちそうしていただきなさいな」
 せっかく食事に誘ってくれたのに、工藤。
アスカさんとの約束を反故にもできなかったしな。
 あーあ、工藤との食事なんて、もう半永久ないかもな。
 オフィスにいる時にとばかり、デスクでしばらくデータ処理やら書類作成をやっていた良太は、夕方五時近くになってオフィスのドアが開いたので顔を上げた。
「千雪さん、どうしたんですか?」
 ジャケットの肩が濡れている。
「いや、ちょっとな」
 勝手知ったるで千雪は窓際のソファに座った。
「今日、傘持ってくるの忘れて、濡れてしもた」

 


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