鈴木さんがタオルを持ってきて千雪に手渡した。
「温かいものお持ちしますね」
「おおきに」
良太はちょうど書類を作り終えてプリントアウトしているところだった。
「京都行ったんか? 良太は。今撮影向こうやったろ?」
良太が千雪の向かいに座ると、鈴木さんがまたおたべとお茶を持ってきてくれた。
「おたべやんか、何か久しぶりやな」
いただきます、と千雪は鈴木さんににっこり笑う。
「さっき戻ったんですよ」
「へえ、順調なん?」
なるほど、と良太は理解した。
「千雪さんも本谷のこと気にしてるんでしょ」
「まあな。大澤がえらい剣幕やったやんか」
「実は、ちょっと大変で………」
「おい、やっぱあいつあかんとか言わんときや」
良太が難しい顔をして見せると、千雪が本当に焦ったように身を乗り出した。
「とかって、まあ、何とか大丈夫みたいですよ。確かにちょっとまずい時もあったみたいですけど」
「俺を脅かすな!」
良太はハハと笑い、「ほんと、もう大丈夫みたいでしたよ」と念をおした。
「本谷、前のドラマまでは、科白は今一つでしたけどいい感じで終わったんですが、さすがにドラマのジャンルも違うし、彼、割とメインなんで、四苦八苦してて、工藤も気にかけてたみたいで」
千雪は渋い表情でお茶をすする。
「でも、今朝、俺が大ヒントを授けたら、もうバッチリよくなったんです」
「なんや大ヒントて。うさんくさい」
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