風そよぐ121

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 この二人は随分長い付き合いのようだが、こちらもどうやらうまくいっているらしい。
 何だかちょっと、羨ましい。
「ああ、あの子、ハスキーの?」
 良太はスキー合宿にも千雪が連れてきていた大きめのワンコを思い出した。
「撮影現場、ラインに送っておきます」
「よろしゅうに。ほならな」
 これまでも映画やドラマ化された小林千雪の作品は何作かあるが、千雪が撮影に顔を出すのは珍しく、確か青森でロケがあった「ぶなの森」以来だった。
「本谷選んで、よかったこともあったわけやね」
 良太はふふんとにわか関西弁で独り言ちた。

 京都での収録が終わったその夜、大女優の山内ひとみやアスカに、川床料理に誘われた本谷は断ることもできず、山根や久保田、それにひとみのマネージャーの須永やアスカのマネージャー秋山とともに老舗『貴船屋』に連れていかれた。
 実は撮影の終了間際になって、『からくれない』の原作者である小林千雪が顔を覗かせていることを知って緊張した本谷だが、その頃にはもう科白は終わっていた。
「もうググッといって、ググっと」
 ひとみに言われて本谷はビールの中ジョッキを半分以上空けた。
「やだ、ひとみさん、オヤジ入ってるわよ、新人に無理強いしちゃダメじゃない」
 ひとみの隣に座るアスカが窘め口調で言った。
「だーいじょうぶよ、本谷くん、鍛えられてるから」
「はい! 何か久しぶりに美味いビールです!」
 本谷はその日機嫌がよかった。
 何しろ、リテイクも少なくなって、結構役にはまり込んできていると山根にも言われてほっとしていたのだ。
 しかも、撮影に顔を見せた千雪にも、頑張ってください、と激励の言葉をかけられ、少々舞い上がり気味だった。

 


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