風そよぐ122

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 それでも貴船川の流れを間近にして懐石料理を味わうなどというのは自分には分不相応な贅沢な気がすると本谷が口にすると、アスカがハハハと笑った。
「気にしなくて大丈夫。どうせ、ここだって工藤さんもちなんだから、経費よ、経費」
「はあ、でも……」
「そんなこと気にしてるとせっかくのお料理がまずくなっちゃうよ?」
 アスカに言われて、本谷は頷いて箸をつける。
 その時、ひとみの携帯が鳴った。
 ひとみは座を持することもなく、携帯に出た。
「高広、今どこ?」
 高広、という名前に、本谷はすぐに反応した。
「え、今、『貴船屋』よ。早く来てよね」
 それだけで電話を切ると、ひとみはまた料理に取り掛かった。
「あの、工藤さん、も、いらっしゃるんですか?」
 恐る恐る本谷がひとみに聞くと、「ええ、打ち上げだからさっさと来いっていってあったんだけど、まだ高雄なんだって」と答える。
 それからひとみはアスカに向き直った。
「でもさ、高広、ここんとこやつれてると思わない?」
「そうねぇ、やっぱ、相当こたえてるんじゃないの?」
 二人が工藤の話を始めると、本谷は思わず箸を止めた。
「まあねぇ、いくら忙しくっても、会おうと思えば会えるんだから、ずっと放りっぱなしにされたら怒るわよ、そのうち高広、愛想つかされても知らないから」
「ちょっと仕事減らしたらいいと思うんだけど。そしたらあたしもまとまった休みとれるし、工藤さんだってご機嫌取りできるじゃない」

 


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