風そよぐ123

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 誰が聞いてもおそらく工藤とその相手とのことだろうと思われる二人のやり取りに、本谷はつい口を挟まないではいられなかった。
「工藤さん、付き合ってらっしゃる方いらっしゃるんですか?」
 よく冷えたワインをゴクゴクと飲みほして、ひとみは、「そりゃまあね」と思わせぶりな答え方をした。
「仕事漬けの毎日だからさ、こういう仕事してると、付き合うってもなかなか難しいのよね」
「本谷くんは、いるの? 彼女」
 塩焼きをぺろっと平らげたアスカがするりと聞いた。
「え………、いや、営業やってた時、会社の人と付き合ってたんですけど、俺が今の事務所に入ってしばらくして、すれ違いっていうか、会えない時が続いてしまって、結局、別れようって言われちゃって」
 苦笑いをしたものの、本谷は心穏やかではない。
「そうなんだ、残念だったわね~、あ、これ美味しい~」
 アスカは鱧の天ぷらを口に入れた途端、幸せそうに言った。
「本谷くんすんごくもてるでしょ? 今まで仕事で知り合った子とか、どうなの?」
 見事に話をすりかえて、アスカがそれこそ直球で聞いた。
「いや俺なんか、全然……。俺、どうもノリが今一つってか……」
「ああ、竹野とか、歯に衣着せるなんてこと知らないから、あの子みたいなの頭に置いちゃだめよ」
 竹野とは言わなくても、十分本谷の胸にグサグサくるようなセリフをアスカはさらりと口にする。
「アスカさん、竹野さんとは部類が違うとはいえ、あなたもまったく歯に衣着せない人ですから、本谷さんをいじめないようにしてください」
 そこへ秋山の指導が入った。
 さっきからひとみとアスカが本谷を呼んで一体何を企んでいるのかと秋山は聞き耳を立てていたのだが、どうも気になっていた。

 


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