風そよぐ127

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 黒縁の眼鏡をかけ少しカールがかった髪を掻きまわして目を半分も覆うと、こうして眼鏡を外し、髪を掻きわけてくっきりと目を見せているだけなのに別人と思われる。
 加えて千雪の場合はジャージとスエットに運動靴というもっさりとしたコスプレのせいで同一人物と当てた者はいない。
「あ、あの、このドラマに推薦していただいて、ホントにありがとうございます。初めは皆さんにご迷惑おかけしてばかりでしたけど、セリフも少しは何とかなりそうになって参りました」
 それでも本谷は何とか自分を落ち着かせると、小林千雪と知って丁寧な言葉で今の状況を告げた。
 元はリーマンだったからと良太が言っていたのを思い出した。
礼儀正しいのは社会でしっかりもまれてきていることもあるだろうが、性格が真面目なのだろうと千雪は見て取った。
「へえ、ユキが推薦したの? 大丈夫よ、彼、仕事やるたびに伸びてるから」
 推薦した、というキーワードが千雪の胸にチクリとささる。
 が、アスカがそう評価しているのなら、まあ大丈夫なのだろう。
「そろそろ高広くるんじゃない?」
「工藤さん、驚くわね、ここにユキがいるとか」
 ひとみと結託しての作戦だとアスカは言っていたが、聞いてみると本谷がどうやら工藤を好きらしいというのが、千雪は別の意味で可哀そうな気がした。
 良太が、本谷のことで工藤を勘違いして、引っ越しまで考えているなんてことを聞けば、何とかしてやれるものならと思う。
 工藤がまったく本谷のことでその気がないというのならなおさらだ。
 けどな、周りが何を言うても、要は本人たちの問題なんやからなぁ。
 千雪が工藤の恋人だと勘違いさせて、本谷が工藤を諦めるように仕向ける、とはいっても、人を好きな気持ちがそんなに簡単になくなるものだろうか、と千雪は思うのだが。
「あ、工藤さん、きた!」
 アスカが工藤の姿を認めて言った。

 


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