風そよぐ13

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「オーっと、工藤、逃げようったってそうは問屋が卸さねぇぜ? 大体、たまには可愛い部下を飲みにつれてってやるくらい、当然だろう」
 渋い顔の工藤と目が合ったものの、どうやら坂口の誘いを断るなんてことはあり得ないらしかった。
「え、でも俺、車ですし」
 とりあえず軽く抗議をしてみるものの、「んなもん、タクシーってもんがあるだろ。車なんか駐車場に置いときゃいいって」で坂口に跳ね返される。
 宇都宮をはじめ、ひとみ、アスカ、秋山、竹野、本谷、脇を固める木島、相原、小日向ら撮影に参加していた俳優陣と、ディレクターの溝田とADの矢田、工藤、それに良太が加わって坂口が総勢十三名を率いて、御用達の西麻布のバーに向かうことになった。
 ひとみは飲みに行くからとマネージャの須永を返してしまったし、本谷のマネージャ清水は他にも担当している俳優がいるらしく、粗相のないようにとか本谷に言い置いて良太と入れ違いにスタジオを後にした。
 何か、本谷さんとこ大きなプロダクションだからか、大変そうだな。
 良太は小さい会社でも、それぞれにマネージャがついている自分の会社はまだましなのかもしれないと同情の目を向けた。
 タクシー四台に分かれたが、坂口が良太を引っ張って一緒の車に乗ったので、必然的に工藤が助手席に座った。
「工藤、お前最近付き合い悪くねぇ?」
 坂口が前に座る工藤に文句を言う。
「あんたみたいに要領よくないんで、貧乏暇なしなんですよ」
「なーに言っちゃって、この不景気にお前ンとこくらいだろ、みっちり仕事がいっぱいなんてぇのは」
「うちはご存じの通り万年人手不足なんで、余力なんかないんですよ」
「だったら少し仕事をセーブすりゃいいだろうが。何をあくせく生き急いでるんだか知らねェが、ちったあストレス発散させねぇと、早死にするくれぇがおちだぜ」
 そんな坂口の科白に、良太は心の中で頷いた。

 


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