風そよぐ132

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 ある意味工藤よりずっと手厳しい秋山が容赦なくお開きにしますと宣言し、川床料理の店を出ると、ひとみと須永を先にタクシーに乗せ、本谷とアスカを後部座席に促して、秋山はタクシーの助手席に乗り込んでホテルまで送っていった。
 工藤は山根や久保田とまだ話があるようで、山根が最近見つけたというお気に入りの店へと三人は向かったらしい。
「向こうの映画もかなり難ありらしいのに、工藤さんが高雄から降りてきたのは千雪さんが顔を見せたということもありますが、やはり本谷くんのことが気になるんでしょうね」
 エレベーターに乗り、本谷が先の階で降りると、アスカと二人きりになった秋山がそんなことを言った。
「気になるって、何がよ」
 工藤と本谷と良太のことばかりここのところ考えていたアスカは、つい、そんな言い方になった。
「本谷くんがなかなか殻を突き破れないでいることでしょう、当然」
「ああ…。まあ、そうね、ちょっと良くなった感じはするけど」
「だがまだ、彼の中で暗中模索状態なんでしょうね。ただ、あの本谷くんが、暗中模索状態まで来ていることには、少々驚きですけどね」
 秋山はアスカを送って部屋の前まできて苦笑した。
「何気にちょっとひどい言い方じゃない? あんなに伸びると思わなかったとか?」
「そうですね、あの手の大きな事務所ではちょっと人気が出れば、いきなりドラマの主役を張らせたり、それでものにならなければすっと梯子をおろす。タレントは使い捨てですからね。でも……」
 秋山は腕組みをして続けた。
「誰しも飛躍のチャンスはどこかにあるので、ただ、それを生かせるか生かせないかで決まるんでしょう。彼が事務所につぶされずにすんでいるのは、チャンスの糸口を掴んだからです。工藤高広というね」
 その言葉にもアスカは反応してムッとした顔をする。

 


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