風そよぐ133

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「本谷が、これから大俳優に化けるだろう磨きがいのあるダイヤモンドだとでも言いたいわけ?」
 秋山は「そんなことは言ってませんよ」とアスカの発言を即座に否定した。
「工藤さん、知り合いに頼みこまれて本谷主演ドラマに関係することになった当初、学芸会以下だとかクソミソだったって、良太が言ってたの覚えてませんか。実際そうだったんですけどね、工藤さんにどやしつけられても、本谷、意外と打たれ強かったんでしょうね、多分、営業で鍛えられたって言ってましたから、功を奏したのかも。それが、工藤さんの本谷に対する印象を変えたんでしょう」
「ふーん、それで手取り足取り、工藤さんが飛躍させようとしてるって?」
 すると秋山は低く笑った。
「まさか。あの人はそんなに親切なひとではないでしょう。あくまでも飛躍するのは本人と言う人ですから。でもドラマ一つをいい出来に仕上げるためには、ここで本谷がある意味化けてくれることがかなり大きなポイントになると、工藤さんは見てるんでしょう」
 そう言われると、アスカも頷かざるを得ない。
 制作スタッフと俳優陣がタッグを組んでドラマという作品を作り上げるのだから。
「ただし、ドラマは作る前に、誰を何をチョイスするかで大きく左右されますからね。最近、うちが関わったドラマとかのキャスティングって、誰が決めてるか、知ってますか?」
「キャスティングて、だって、『田園』とかは坂口さんと工藤さんでしょ? 『からくれないに』だって、ユキの原作だし、工藤さん力入れてるから」
「まあ、メインとかは坂口さんがあてがきって気もしないではないけど、宇都宮さんと竹野とかはね。でも実は坂口さん二人以外誰も考えてなくて、工藤さんに丸投げと思いきや、良太がこぼしまくってる通り、そのまま丸投げされてる」
 アスカは顔を上げて秋山を見た。
「良太です。この『からくれいないに』なんかほぼみんな。『田園』のキャスティングなんか、後で工藤さんに聞いた話ですけど、小樽で工藤さんや宇都宮と坂口さんが顔を合わせた時、良太もいて、坂口さんがキャスティング誰がいいか聞いたら、奥さん役はひとみさんしか思い当たらないって。で、そのまま、GO」
「ウッソ、何よそれ!」

 


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