風そよぐ136

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「東京に戻ったら、少し良太のことを注意してみてみましょう。ちょっと意固地になっているのかもしれません。とにかく今夜はあまり考えすぎず、ゆっくりお休みなさい」
 ムキになって訴えるアスカにも、冷静にそう答えると、秋山は自分の部屋へと向かった。

 金曜日の昼には、千雪から良太に撮影に顔を出したと連絡が入った。
「思ったより、ええ感じでやってはるみたいやし、ほっとしたわ」
 本谷のことを心配していたが、普通にやってるようすだったという。
「だから、大丈夫だって言ったじゃないですか。最近、いくつかドラマにも出てますけど、出るたびに伸びてるみたいで、工藤さんも目をかけてるらしいし」
 所属する事務所の思惑で最初に本谷がドラマの主役を張らされた時からすると、非常に早い段階での進歩だと、良太は思う。
 初めは学芸会以下だと言っていた工藤が、ある時ドラマの撮影現場から帰った際、そういう怒りのオーラがなかったことを、良太は微妙に感じ取っていた。
 ドラマの視聴率も微増だが右肩上がりで、ドラマ配信も順調に伸びていて、そうしたデータからも、また実際ドラマを見ても、セリフは別としても同じ回に初めの方の撮影と後の方で撮っただろうシーンのその違いがわかるくらい表情の雰囲気がよくなっていた。
「へえ、工藤さんもお気に入りの俳優さんなん?」
 アスカから今回の良太の件を相談されていた千雪はわざとそんな風に聞いたのだが、良太はあっさりと、「そうみたいですよ」と答えた。
 工藤のことを抜きにして仕事目線で考えようと努力していた良太は、内心は千雪のいう、お気に入りの俳優、という言葉に少し動揺しないではなかった。

 


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