風そよぐ137

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 これが暇でしょうがないような時なら、千雪にもイラついて、ああでもないこうでもないと考えてしまったかもしれないが、生憎、忙しさマックスな状況にあって、そんなことを考えている余裕もないのだ。
 千雪からの電話が切れるや、良太はバッグを掴むと、「行ってまいります~」と鈴木さんに声をかけ、オフィスを飛び出して駐車場に向かった。
 東洋商事のCMの仮編集の打ち合わせで、藤堂、佐々木と一緒に、日本橋の本社に一時半の予定になっていた。
「お疲れ様です」
 プラグインの前で藤堂と佐々木を乗せたのだが、佐々木は本当にお疲れのようで、疲れていても疲れは見せない藤堂ですら、前髪が少し垂れているのが、お疲れを如実に物語っていた。
「本気でお疲れのようですね、二人とも」
「いや、一時は再度撮影が必要かなんてとこまで行ったんだけどね、佐々木さんの機転で何とか無事に」
「まあ、クライアント次第やけどね~」
「何とかなってくれないと、ほら、佐々木さん、来月にはアディノが待ってるでしょ。それまでに局の考査まで持ってかなけりゃ」
 藤堂の言うように、来月七月に入れば、佐々木はアディノのCM制作に焦点を合わせるだろう。
 佐々木も、沢村を使うとなればしっかりしたものを作りたいと思っているに違いない。
 こちらの作業によもや何かしらクレームなりが入ったりして工程がずれ込んだりしたら、あらゆる面で面倒なことになりかねない。
 良太も、どうか修正など最小限にとどめてほしいと思うのだが。
 広報室次長の中平さん、あの人が曲者っぽいんだよな。
 良太は、何を考えているのかわからない表情の読み取りにくい中平の顔を思い浮かべた。
 沢村と会ったことを佐々木に伝えようと思ったのだが、佐々木の難しい表情からすると、今はそれどころではないな。
 沢村も交流戦真っ最中だし、この仕事も中平さんの出方によってはどうなるかわからない。

 


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