「なるほど、さすが、良太ちゃん! 子供たちのはじける笑顔がラストに来るとか? いやあ、これは、この三人、何かいいかもだよ。俺と佐々木さんと良太ちゃんで、これからもぜひ何かやろうよ!」
藤堂はいきなりテンションが上がり、こちらもインスピレーションが降りてきたようだ。
ヒントくらいになればいいが、実際、これから作業をするのは佐々木なのだ。
佐々木オフィスにも何か差し入れしよう。
何がいいか、直ちゃんに聞いてみるかな。
そんなことを良太が考えていた時だ、ハンズフリーにしている良太の携帯が鳴った。
携帯が奏でるワルキューレに、良太の背中に一瞬緊張が走る。
ちょうど車は赤信号で停まった。
「はい、お疲れ様です」
「そっちはどうだ?」
工藤の声が低く社内に響く。
「えっと、今、東洋商事からの帰りで、藤堂さんと佐々木さんと一緒です。少し修正することになりましたが、概ねいい感触でした」
工藤とは高雄で少し話したきりだが、疲れているせいか、工藤の声が目に染みて、瞼の奥が熱くなりそうになった時に、青信号に変わったので良太は焦った。
アスカに本谷と工藤のことを白状させられて、再認識したのは、工藤に借りている金を返さなければならないからには、それに今までの工藤への恩義に対してもおいそれと会社を辞めるわけにはいかないということだ。
「ヤギさんとこも、何とか来週にはナレーションを入れてもらえそうな気配です」
「そうか。こっちは明日、高雄で能楽師が入る予定だから、そっちに戻るのは土曜日になる」
「檜山匠さんでしたね。そういえば千雪さんから、撮影に顔を出したって連絡がありました」
「ああ。ちょくちょく顔を出せと言っておけ。………」
その時、工藤は誰かに呼ばれたらしく、「とにかく気を緩めるな」と言ったかと思うと、電話はいつものごとく、ブチッと切れた。
そういえば、工藤、本谷とも電話でやり取りしてるんだっけ。
思い出さなくてもいいことばかりが頭に浮かんできて、心を切なくさせる。
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