風そよぐ141

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「忙しそうだね、相変わらず、工藤さん」
 藤堂が言った。
「ワーカホリックの典型じゃないですか」
 つい良太はつんけんした言い方になる。
「良太ちゃんがいるから、工藤さんもあちこち動き回れるんだよ」
「俺がいようといまいと関係ないですよ、あの人は……あ、じゃ、また子供たちに集まってもらいますね、追加で撮影されるんですよね?」
 今回のCMのために、良太は下柳のつてで児童劇団の子供たちに撮影の協力を依頼したのだが、何の演出もない屈託のない笑顔を見せる子供たちは見ているだけで楽しかった。
「あの子たち、ええ表情しとったもんなぁ」
 佐々木も良太と同じようなことを考えたのだろう。
 佐々木と藤堂のスケジュールを合わせ、撮影スタッフに問い合わせてから、撮影日をもう一日設定しなくてはならない。
 一番町の佐々木オフィスの前で佐々木を降ろし、プラグインのある青山へと向かう。
「何だか運転手させちゃったね、良太ちゃん」
「いえいえ、どうせこの後ヤギさんとこに行くので」
「何かあった?」
「え?」
「そういう雰囲気だけど」
 藤堂は侮れない。
 人の感情の機微まで読み取ってしまうから、油断がならない。
「何だかあれこれ忙しくて、ちょっと気が休まらない感じなんですよ」
「ふーん。まあ、何か俺で役に立つこともないこともないから、いつでも話を聞くよ」
 良太は適当にごまかしたが、藤堂はまた紛らわしい言い回しで笑った。
「ありがとうございます」
 プラグインの前で藤堂を降ろすと、良太はゆっくりハンドルを切った。
 部屋に戻ってきたのは午後十時を回った頃だった。

 


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