風そよぐ149

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 秋山はオフィスを出ると、夕食用にコンビニで弁当を調達し、青山にある自分の部屋に戻ってシャワーを浴びて着替えてから、弁当を食べに向かった。
 食事を終えて時間を確認すると、七時少し前だった。
「もうちょっとしたら出るか」
 大概プライベートでも外に出る際はジャケットがないと落ち着かない秋山は、Tシャツの上に麻のジャケットを羽織る。
 このマンションはエリートと呼ばれた商社マン時代に購入したもので、当時は結婚して二人で住む予定だったため、三LDKと一人住まいにしては広いのだが、とっとと売ればよかったものを商社を辞めて割とすぐに青山プロダクションの仕事に就いたため、未だにローンを支払いながら売る機を逃していた。
 はっきり言って面倒くさくなっただけなのだが、給料が下がったとか支払いが滞りそうになったというのなら、とっとと売っていただろうが、今の会社の手取りは大手商社のエリートの給料をはるかに上回るものだ。
 しかもボーナスも破格だから、既に六割がたローンは終わっている。
 良太が部屋にほぼタダで置いてもらっているのを工藤の恩情でなどと気に病んでいるらしいが、社員全員破格な待遇を得ているのは確かだ。
 おそらく工藤は金銭に対して執着がないんだろう。
 いや、良太をタダで部屋に置いているのは、別の意図からだろうと思うが。
 秋山は久々、自分の愛車のエンジンをかけた。
 これも商社マン時代から乗っているアウディで、もういい加減年式も古いのだが、仕事では社用車のレクサスLS500を乗り回しているし、さほど使う必要性がない。
 レクサスはアスカの送迎をするのに使っていた車を刷新する際、工藤に自分で選べと言われ、品の良さや乗り心地の良さから秋山が最近選んだものだ。
 どうやらアスカや鈴木さんらの間では、秋山のプライベートは謎だとか言われているようだが、仕事が趣味みたいな人間の秋山には、何もしたいことが思いつかないから、休日は読書をするか仕事のために映画などを見ている程度なのだ。
 それに何だかだとアスカが秋山を頼ってくるから、それこそ何も見つけることなどできようもない。

 


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