秋山はしばらく店の外でようすを窺っていたが、おそらく店に落ち着いたのならしばらく出てこないだろうと、車を取りに戻ると、今度はバーを通り越して車を向かいのマンションの塀に横付けした。
「ここって、業界関係者多いですね」
奥の席に宇都宮と二人通されて、良太は店内を見回した。
さほど広くはないが、カウンターの後ろに二人用のテーブルが数組、あとは奥に四人掛けのテーブルが二つあった。
モデルや駆け出しの女優と業界人らしき男の組み合わせがちらほら見て取れる。
中には宇都宮を知っている者もいて、ちょっと挨拶したりするが、邪魔をするようなことはない。
スタッフも礼儀正しく、きびきびと動いている。
「そういえばそうだね。前来た時は、若い子ばっかだと思って、俺みたいなオッサン、場違いじゃないかってばっか気にしてたから」
良太は笑った。
「ひょっとして、前の彼女さんと?」
「そう、俺、こんなおしゃれェな店、あんまし来ないから」
「え、そうなんですか?」
「俺、どっちかっていうと、昔気質なオヤジがやってる小料理屋とかの常連」
「意外」
「そうかあ? だって坂口さんとかとこんな店来てどうするの」
良太は坂口と宇都宮がこのおしゃれなバーで顔を突き合わせているのを想像して吹き出しそうになった。
「や、でも大人の女性とかと行くんだったら、もっと落ち着いた会員制クラブとか?」
「おや、そういうとこのがよかった? 行く?」
すぐにでも鞍替えしそうな宇都宮に、良太は慌てて首を振った。
「とんでもない、俺には似合いませんて」
「良太ちゃんはどんなとこ好きなの?」
「俺は、仕事で接待とかで行くくらいだし、そんな知りませんよ。ってか、普通ダチと行くんならやっぱ大衆居酒屋とかファミレスくらいだし」
すると宇都宮は「ファミレスあんまし行ったことないんだよね。今度連れてってよ」などという。
「はあ………」
人気アイドルじゃなくても宇都宮さんがファミレスとか行ったら大変だろう。
良太は苦笑いでごまかすしかない。
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