そこで良太ははたと気づいた。
「また、俺の相談ごとみたくなっちゃってますね。そういえば、宇都宮さん、前に相談とかおっしゃってたのって、どうにかなったんですか?」
ちょうど『田園』のプロモーションイベントの際、宇都宮に相談があるからと食事に誘われたのを良太は思い出した。
「ああ、あれはもうOKだから。それより、どう? 引っ越し、どうするか決めた?」
それは聞かれるかと思っていた良太だが、うーん、と口を開いた。
「やはり、今の段階では引っ越しは難しいかなって。もちょっと、余裕ができてからっていうか……」
「そっか、それは残念」
宇都宮は珍しく眉を顰めた。
「すみません」
「いや、良太ちゃんが謝ることはないよ。俺が勝手に良太ちゃんが来てくれたら楽しいかなとか、一人で妄想してただけ」
あ、でも、と宇都宮は続けた。
「今度良太ちゃんの部屋で冬に鍋するってのは、まだ有効だよね?」
「はあ………でも俺の部屋とか、宇都宮さんとこからするとメチャ狭いし」
「鍋囲む人数さえ入れればいいんじゃない?」
にっこり笑う宇都宮は悪びれない。
「まあ、そうっすね」
それから宇都宮が今撮影している映画の話や、監督が一日一回はスベることがわかっているダジャレを口にするんだとか、面白おかしく話して聞かせる。
あまりバラエティなどには出たりしないが、大物らしからぬラフな雰囲気とあいまってこういうところが根強い人気の要因なのかもしれない。
二杯目のカクテルを飲み終えた良太が、腕時計をみると、そろそろ十時半を過ぎようとしていた。
「おや、もうこんな時間か。なんとも短い逢瀬だねぇ」
良太は宇都宮の大袈裟な言い回しに笑った。
「じゃ、約束通り十一時に良太ちゃんの部屋に送り届けることにしよう」
「え、いや、いいですよ、ここから歩いてもそうかからないし」
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