秋山がしばらく携帯で再度スケジュールの確認などをしていると、二人がやってくる気配がした。
二人の様子からは相変わらず和やかな雰囲気しか感じられない。
「こんなところまで、ありがとうございました、宇都宮さん」
会社の前まで来ると、良太はぺこりと頭を下げた。
「良太ちゃんてさ」
「はい?」
ほろ酔い加減でニコニコしながら良太は宇都宮を見上げた。
「ほんと、可愛いよね」
宇都宮がふっと笑う。
「へ?」
良太の後ろにはちょうど大きな円筒形の支柱があった。
見事に素早い所作で宇都宮は良太を壁ドンならぬ柱ドンで両腕で挟み込んだ。
秋山もあっという間の状況を見守るしかなかった。
宇都宮の唇が良太のそれに触れるか触れないかのその時、酔った頭にも理性が戻ってきた良太は両手で宇都宮の胸を押し除けた。
「だめですよ」
今更ながらにアスカの言った、きっちりターゲットにされてるじゃない、という言葉が良太の脳裏に蘇る。
「どうして?」
振ってきた宇都宮の言葉は聞いたことのないくらい甘く、優しかった。
だから、嫌いにはなれない。
だけど………。
「俺………好きな……人が………」
そこまで口にすると、知らず涙が溢れてくる。
やっぱり、俺、好きなんだ………。
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